近年、日本ボクシング界の人気が戻りつつある。村田諒太、井上尚弥らのフレッシュな話題のほか、世界王座にも内山高志、山中慎介、井岡一翔らの実力者が君臨し、ファンの熱気が熱くなったのも事実だ。ブーム到来の予感がする中、その追い風にも乗って新たな伝説シリーズの放送が6月3日にスタートした。

フジテレビCSチャンネルのNEXTでの「世紀の一戦」シリーズで、記念すべき第1弾ではスーパースターの名をほしいままにした天才ムハマド・アリ(米国)が取り上げられた。アリの10試合をほぼフルラウンドで紹介するもので、リング上の闘いだけではなく、リング外の貴重な映像が流されるのも特徴。コアなファンだけではなく、アリを知りたいファンへの最高のプレゼントである。

第1回では1964年2月、アリ(当時はカシアス・クレイ)が王者ソニー・リストン(米国)に挑んだ世界ヘビー級タイトルマッチが放送された。新時代のヒーローとしてアリへの期待感は十分にあったが、当時のリストンの力は別格と見られていた。史上最強のハードパンチャーとも表現され、試合前のカケ率では1―8でアリの断然不利。新聞記者の評価も同じようなもので、誰もがリストンのKO勝ちを予想した。

試合は左右フック主体に前進するリストンに対し、アリの軽やかなフットワークが目立つ。しかし、5回にはリストンが反撃。アリはサミングで目を痛めたという説もあるが、劣勢に立たされた。ラウンドが終わり、セコンドのアンジェロ・ダンディーに試合放棄を訴えたというシーンには驚かされた。しかし、すぐに立ち直り、アリは6回に集中打を見舞った。ダメージの深いリストンはついに7回のゴングに応じられなかった。

リング上は大変な騒ぎだ。「俺は偉大だ。俺の負けを予想したのは誰だ!」とアリはまくし立てた。リストンは左肩を脱臼したのが棄権した理由だが、アリのテクニックの前に空振りを繰り返した結果だろう。

歴史の再検証。このシリーズを通し、アリの凄さがあらためてクローズアップされるに違いない。アリの全10回が終われば、次はどのような歴史的な強豪が見られるのだろうか。ボクシングファンにはこたえられない番組といえそうだ。(津江章二)