フェルナンド・アロンソがスペインGPで勝利を飾り、自身の通算勝利数を32に伸ばした。これで、31勝で並んでいたナイジェル・マンセルの記録を抜き、通算勝利数では単独4位に浮上した。ちなみに、1位は昨年引退したミヒャエル・シューマッハーで91勝、2位はアラン・プロストで51勝、3位はアイルトン・セナで41勝である。今回の記録更新を母国GPであるスペインで飾ったことや、カタロニアサーキットでグリッド5番手から勝利したことにも、内外のメディアを含め、アロンソのレース巧者ぶりを高く評価する声が集まっている。

実はカタロニアサーキットは、ポールポジションか、予選2位の最前列スタートでなければ勝てないサーキットと言われている。事実、1991年の初開催以来、今年で23回のグランプリを開催したが、ポールポジションからの勝利数が17回で勝率73・9%。グリッド2番手も含めた最前列からの勝利数だと21回で勝率91・3%になる。つまり、最前列以外はほぼノーチャンスのサーキットなのだ。最前列以外で勝利したのは、1996年に当時ベネトンのミヒャエル・シューマッハー(グリッド3番手)、そして今回のフェルナンド・アロンソだけである。もちろん、今年はタイヤをいかにコントロールするかが勝負の分かれ目となるシーズンで、単純な速さではない、という声もある。しかし、それは全ドライバー同じ条件であり、言い訳にはならないだろう。そこは、最前列スタートという絶対的有利な条件をひっくり返すほどに、フェラーリとフェルナンド・アロンソによる総合力が高かったと評価すべきだ。

さて、そんなフェルナンド・アロンソは、日本人なら誰でも知っているであろう「武士道と云うは死ぬことと見つけたり」という名言を残した、佐賀鍋島藩藩士の山本常朝が、武士道について説いた「葉隠」に大きな感銘を受けて、その背中に武士のタトゥーを入れている。どんなに苦境の時でもチーム批判などすることなく、どんな小さなチャンスでも見つけてそれを掴むために全力を掴む。

作家、浅田次郎がエッセイに書いた天才の定義に「努力することを厭わない」とあるが、今回の勝利で「いま多くのスペイン国民が不景気で苦しんでいるなかで、この勝利を飾れて嬉しい」と、自分よりスペイン国民のためとコメントしたアロンソに、天才の姿を見た気がする。(モータージャーナリスト・田口浩次)