第85回選抜高校野球大会が4月3日、兵庫県西宮市の甲子園球場で閉幕した。1日で記者4年目に突入し、大阪に来てから夏を含めて5度目の高校野球取材となった。学生時代にプロ野球をテレビで見ていたものの、高校野球はほとんどじっくり見た記憶がなく、地元東京の日大三が勝ち進むのを新聞で見て喜ぶくらいだった。幼少のころ米国にいたためなのか、それとも中高6年間を女子校で過ごしたからかわからないが、高校野球熱というのがどうも理解できなかった。入社してからもどうして高校生の大会を毎日取材するのか、どうしてプロスポーツよりも高校生の記事が大きく載るのか疑問を感じたのを覚えている。それが自分なりに解消できたのは、選手を取材するようになってからだった。

大会数日前に各校が行う30分間の甲子園練習。21世紀枠や初出場校の選手たちが夢にまで見た場所にようやく足を踏み入れた時、独特の緊張感と高揚感がわれわれ記者にも伝わってくる。まだかまだかと緊張しながらサイレンの音を待ち、いざグラウンドへ駆けだすと、息を切らしながら必死に白球を追う。まさに「青春」。26歳の私は、高校生の初々しさとひたむきな姿を見ると、自分ももっと努力しなければと毎回気が引き締まる。

一日も順延されなかった今大会は福島・いわき海星をはじめとする東日本大震災の被害に遭った学校や北海道・遠軽のように厳しい寒さの中でも工夫して練習してきたチームが出場した。いわき海星は1回戦で遠軽と戦った。震災により野球道具が流され、いまだにグラウンドは工事中だが、坂本主将は「遠軽の話を聞いて自分たちの方が恵まれている面もある」と話した。いわき海星は投手戦の末に遠軽に敗れたが、坂本主将の言葉は被災した方々だけでなく、多くの人の心を動かす言葉で、本当に立派だったと思う。

ある監督が「全国制覇って何かなって思う。何かいいことがあるのかな。試合をできる喜びの方が高校野球っぽいよなと思う」と話していたのをふと思い出した。もちろん選手にとっては勝つことが何よりも大事なことで、そのために毎日歯を食いしばって練習した。しかし、勝っても負けても選手たちが最後まで一生懸命プレーし、野球というスポーツを通じて人間として成長していく姿が何よりも彼らにとっての財産になり、そして私たち大人にとっても「夢」を与えてくれる舞台となる。13日間の取材を終えたばかりだが、球児たちの夏を見届けるのが楽しみになった。

最後に。

2月28日に亡くなった元共同通信社編集委員の万代隆さんへ哀悼の意を表したい。高校野球を長年取材されていて、どんな質問をしても答えを知っていた。バックネット裏からもっともっと試合を見たかったと思う。今大会は万代さんの席に遺影を飾らせてもらった。夏もちゃんと見えるように、特等席を用意しているので楽しみにしていて下さい。

星田 裕美子(ほしだ・ゆみこ)2010年に共同通信入社。同年12月から大阪運動部勤務。主に陸上、サッカー、アマ野球を担当。1986年生まれ。東京都出身。