プロ野球が3月29日に開幕した。開幕シリーズでは、早くも話題の高校出ルーキーがデビューした。日本ハムの大谷翔平選手(花巻東)と阪神の藤浪晋太郎投手(大阪桐蔭)である。

大谷選手は西武との開幕戦に「8番・右翼」で先発出場して2安打1打点と活躍した。高校出の新人野手で開幕戦に先発したのは2年前の駿太外野手(オリックス)がいるが、開幕戦2安打となると1960年の近鉄・矢ノ浦国満遊撃手以来という快挙だった。藤浪投手は31日のヤクルト戦に先発して6回を投げ3安打2失点で敗戦投手となったが、7三振を奪う合格点の内容。あの西武・松坂大輔投手(現インディアンス)らの開幕4試合目を上回る3試合目での先発起用に応えた。2人のうち、大谷選手を見ていて思ったのは「二刀流挑戦にまずは難しい打者で登場した」ということだった。

▽打撃センスの良さ

大谷選手は2戦目も先発出場したが、高校の先輩である菊池雄星投手の前に2打席とも三振を喫し途中で代打を送られた。第3戦は代打で登場し内野ゴロに倒れた。左腕・菊池投手との対戦ではボール球の外角スライダーに手を出すなど、左腕対応という課題を与えられた格好だが、開幕戦では弱点とされた内角球をとらえ初安打となる右翼線二塁打している。現代っ子らしく臆せず堂々としたプレーぶりもさることながら、打撃センスの良さを十分感じさせた。投手としては、2軍戦に登板して様子を見るという。本人、栗山英樹監督とも二刀流挑戦の考えに揺るぎはないようだ。

▽目指すは本格的二刀流か

大谷選手はオープン戦の楽天戦(3月21日)で二刀流を披露した。八回から登板し1回を1安打2三振と無難に投げ、打者としてはヒット性の一ゴロという結果だった。ただ、公式戦でこういう起用をするかどうかは分からない。本人、栗山監督とも“本格的な二刀流"つまり投手としては先発で使い、投げない日は野手で起用していく道を探っているような気がする。

昔の例で言えば、首位打者にもなった永淵洋三氏(元近鉄)のように外野を守りながらワンポイントリリーフするのではなく、投手で237勝、打者で31試合連続安打という当時の日本記録をつくった野口二郎氏(阪急など)のように投げては完投し、また主軸を打つ二刀流ではなかろうか。「二兎追う者一兎をも得ず」の危険を覚悟の上で、大谷選手はまずは打者として登場したのだ。

▽圧倒的な投手の新人王

普通なら投手からスタートさせるのが無難といえよう。この開幕シリーズでは、藤浪投手以外にも55年ぶりの新人開幕投手となった楽天・則本昴大(三重中京大)、巨人・菅野智之(東海大)両投手ら新人が登板。勝てはしなかったが、それぞれ好投している。そこそこのレベルの新人投手でもプロの打者は抑えられるが、打者はそうはいかない。早い話が、新人投手の外角いっぱいの速球は一流打者でもそうは打てないが、逆に新人打者がプロ投手の球を打ちこなすのは至難の業なのだ。そのことは、過去の新人王を見れば一目瞭然だ。投手はセ35人、パ42人と野手(セ24人、パ15人、該当者なしの年あり)を圧倒している。投手の方が即戦力になるのだ。

▽1年をかけた挑戦か

プロ入り後は投手か野手のどちらを選ぶかと注目された高校球児は多くいたが、プロ入り時に投手か野手を決めるのが普通である。だが、大谷選手の場合は、高校からいきなり大リーグを目指そうとしたように、誰もやろうとしないことに挑戦しているし、球団もその非凡な才能を前に「両方を生かせる道」を真剣に模索しているのだろう。

おそらく1年をかけた挑戦になると想像している。中途半端になることを心配するファンは多いだろうし、早くどちらかに決めた姿を見たいと願うファンもいるだろう。しかし、大谷選手本人が納得する形でないと、それこそどっちつかずになる。体力、野手に義務付けられる複雑なサインと走塁、守備など、やらなければならないことは山積みだ。それらをどうこなすか、この大型新人に注目し続けたい。

田坂貢二[たさか・こうじ]のプロフィル

1945年広島県生まれ。共同通信では東京、大阪を中心に長年プロ野球を取材。編集委員、広島支局長を務める。現在は大学野球を取材。

ノンフィクション「球界地図を変えた男 根本陸夫」(共著)等を執筆