このオフ、プロ野球界を最も騒がしたのは間違いなくオリックスだ。21世紀に入ってAクラスわずか1度の球団が本気で変わろうとしている。

フリーエージェント(FA)で日高剛と寺原隼人を失ったものの、基本的には獲得ラッシュで、新しく担当になったばかりの私は右往左往するばかりだった。巨人で活躍の場を失った東野峻を獲得し、阪神から平野恵一をFAで、寺原の人的補償で馬原孝浩を迎え入れた。極めつけはキャンプイン1週間前で、日本ハムから糸井嘉男と八木智哉をトレードで獲得した。新選手会長に就任したばかりだった大引啓次、木佐貫洋ら3人を譲ってまで手にしたのは、球界ナンバーワン外野手だった。

元タイトルホルダーの坂口智隆やT―岡田、後藤光尊ら生え抜きに、韓国代表の主砲李大浩。そこに新戦力を加えたメンバーだけ見ればシーズンを前にしてワクワクしてくる。

ところが、である。実はまだベストメンバーがそろったことが一度もなく、本当のところが見えてこない。WBCで糸井が抜け、李大浩も不在だったことはともかく、キャンプに入ってエース金子千尋と岸田護が負傷離脱した。オープン戦期間に入ると平野、馬原…。一人また一人と主力級が抜け落ちていく惨状だ。

こうなるとオープン戦は厳しい。初勝利を挙げるまで7試合を要し、順位だけでなく打率もチーム防御率も最下位だ。ファンはやきもきするだろうが、森脇浩司新監督は悠然としたもの。「接戦をして経験を積んでいくことが大事。勝ち負けの前にやることがある」と積極的な盗塁企画に代表される「スピード野球」の浸透と守備力向上に心を砕いている。

そのかいあって2年目で遊撃手の定位置が目前の安達了一や、20歳になったばかりの駿太が目を見張る成長を遂げた。残り少ないレギュラーポジションを目指して内容の濃い争いが続いているし、チームの雰囲気も明るい。では強力メンバーのけが人が戦列に復帰して若手との融合に成功すれば優勝かというと、まだ足りないものがある。

それは「勝ち癖」である。王貞治監督の下でダイエー時代からソフトバンクを常勝軍団に育て上げた森脇監督からすれば、オリックスの選手たちの「頑張っている」はまだまだ歯がゆいそうだ。知らず知らずのうちにチーム全体で培ってしまった緩さや甘え。これはそう簡単に解決できる問題ではない。

別の団体競技指導者に教えられたことだが、例えば前半戦にいい順位をキープできたとしても、勝ち癖のないチームは「おれたちがこんな上にいるよ、いいのかな」と何とも落ち着かない気持ちになり、それが失速につながることがある。

解決方法は昨季のサッカーJリーグを制した広島のように、それでも勝ちを積み上げるしかないのだが、一つのいい薬は勝利や優勝の味をよく知る選手を入れることなのだという。幸いにしてオリックスには糸井、馬原、東野らが勝利を義務付けられたチームからやってきた。1996年以来の優勝には、彼らが漂わせる“勝利への姿勢"を生え抜き組や若手が吸収できるかにかかっている。

森安楽人(もりやす・らくと)大阪府豊中市出身。2008年共同通信社入社。本社運動部、大阪運動部から大阪社会部を経て12年2月、大阪運動部に復帰。バドミントンのほかJリーグの広島、ゴルフなどをカバーし今季からオリックス担当。