英国メディアによれば、発売開始後30分で7千枚のチケットが瞬く間に売れたという。一方、デンマークの報道では、発売開始から25分で8千枚が飛ぶように売れたとのこと。

数字の正確さはともかく、来たる5月25日のロンドンはO2アリーナでのIBF世界スーパーミドル級王座戦の前売り券が、凄まじい勢いで発売日当日に1万5千枚もさばけたのは事実で、すでに全席売り切れ。

何が英国のファンの気持ちをそこまで煽るのかといえば、同国の専門誌のみならず、全世界のボクサーの戦績を網羅したサイトを日々更新しているBoXRecもまた昨年度の最高優秀選手と認めた35歳のIBF世界王者カール・フロッチ待望の「復讐の日」だからなのだ。

ところで「復讐の日」とは? まずは今日の英国におけるフロッチの立ち位置から説明させていただこう。

「手数も多いが口数はもっと多い」等、その大言壮語ぶりが批判の的となったのも昔の話。その有言実行ぶりで、フロッチは同国で最も頼れる男と目されているのだ。

今が全盛期を示す好例が、昨秋には出版されているはずだったフロッチの自伝「ザ・コブラ」のペーパーバック版が今年2月になってようやく出たことだろう。

同書のハードカバー版の出版は一昨年、最初に獲得したWBC王座を敵地デンマークの国民的英雄ミッケル・ケスラーに激戦の末、小差の判定で奪われ、そのケスラーが眼疾から返上した空位の王座を豪打のアルトゥール・アブラハム(独)を破って最戴冠した激動の年だった。

しかし、以降も米国での王座防衛、やはり米国でのWBAスーパー世界王者との統一戦での敗北を経て、昨年5月には不利の予想を覆す圧倒的勝利で、今度はIBF認定の世界王座を腰に巻いたフロッチだから、ペーパーバック版の自伝には新たに2章ほど書き加える必要が生じたのだ。

さて、冒頭の爆発的な勢いで前売り券が売れたフロッチの試合の対戦相手とは、フロッチに初の敗北を与えた北欧の雄ケスラーその人なのだ。

33歳になるこの映画俳優級の美男子は眼疾治療後に復帰するや、WBO欧州王座、WBCシルバー王座、そして昨年12月にはWBA世界王座を破格の強打で手にしている。

現時点でWBAは王座統一戦を正式承認していないが、統一戦の題目さえ必要としないほどに魅力的で危険な再戦なのだ。(草野克己)