現在、多くの企業にとって重要なのは商品や企業自身のブランド化だ。高性能や信頼性がブランドとなったのは過去の話であり、日本の家電メーカーなどはそうした過去の成功体験から脱却できず現在も苦しんでいる。F1チームへ協賛している企業を見渡すと、マシンにロゴを露出し、単純な宣伝効果を狙っただけではなく、さらなるブランド化を目指して、チームの名前を付けた限定モデルなどを発表している。腕時計、ノートパソコン、自動車メーカー、そして通信キャリア等々、F1が持つプレミアム感を商品や企業にリンクさせていこうとするわけだ。

こうした動きは過去にもあったが、現在は複雑なマーケティング戦略を組み合わせていて、レッドブルはマーケティング活動で大成功した一例であり、1950年のF1スタート時から参戦を継続しているフェラーリは、ブランド化をもっとも成功させた企業のひとつだといえる。

そして近年、ヨーロッパを中心にユニークなブランド強化策を取っているのが、F1にタイヤを供給しているピレリだ。彼らはファッションブランドを立ち上げ、ピレリストアという店舗まで構えて、F1を筆頭にモータースポーツとの関連性をファッションを通じて展開している。マーケティング・ディレクターのアントネラ・ロッシさんによれば、そこには明快な目的があるという。

「ピレリは1872年創業で1890年にタイヤを作り始めた老舗企業です。しかし、この長い歴史や高い技術力などを伝えるには、タイヤを販売している用品店だけでは充分とはいえません。ピレリストアのコンセプトは、ディスプレイなどでピレリの歴史と文化を感じさせ、一般的なファッションブランドにはない新しい素材などを商品に導入することで、よりピレリを知ってもらい、差別化を図ることです。もちろんファッション性はもっとも重要視しています。このピレリストアを展開することで、幅広い世代に、ピレリに対して“クール"などといったイメージを定着させることができます。でも、カッコだけではなく、F1タイヤの供給という実績が加わることで、そのイメージを企業のブランド力へと強化できるのです」

じつはこうした実店舗との連携は、マクラーレンを筆頭にチームも追従する動きが出始めており、今後、どのような広がりを見せていくのか注目したいところだ。(モータージャーナリスト・田口浩次)