かつての隆盛がうそのように静まり返っている総合格闘技界。DREAMが新体制となってスタートすることになり、盛り返してほしいところだが、こんな状況下でも総合格闘技への熱い思いを持っている若者と遭遇する機会があった。

先月中旬に行われたレスリングの全日本大学グレコローマン選手権84キロ級で優勝した鈴木友希(山梨学院大)。この週末に行われた全日本大学選手権(フリースタイル)でも3位に入賞し、同大学の団体優勝に貢献した。

ロンドン五輪で金メダルを取った伊調馨と小原日登美の出身地、青森県八戸市の出身。特に母校(八戸工大一高)の先輩でもある小原の活躍に刺激を受けたそうで、大学王者になったこれからが嘱望される選手だ。

だが、来春卒業した後の進路を問われると、きっぱりと「総合へ行きます」。レスリングに取り組んだ動機が、山本KID徳郁らにあこがれて総合格闘家を目指すためだった。山梨学院大を選んだのも、KIDの出身大学であることが大きかったという。

「オリンピックを目指せる素質のある選手が、もったいないなあ」と思い、老婆心丸出しで「今の総合では食べていけないよ。メーンイベンターでも1試合のファイトマネーがン十万円の世界だよ」と話してみると「子供の頃からの夢ですから」と返された。

オリンピック選手になってもそれで食える選手はひと握りだけ。にもかかわらず夢に向かって汗を流すことを、だれも否定することはできない。その夢が、オリンピックであろうが総合格闘技であろうが、その人の持つ夢に向かっていけばいい。

考えてみると、筆者もやりたいことをやるために超安定企業をやめた人間だ。多くの人から「馬鹿なことはやめろ」と言われたが「自分の人生だから」「やらないで後悔したくない」という気持ちが揺らぐことはなかった。そんな人間に、他人の生き方に口出しする資格などないと内心で笑ってしまった。

今の時代に総合格闘技をやろうという人間は、よほどの覚悟をもっている選手。鈴木の今後に期待するとともに、夢を持って挑む選手が報われる総合格闘技界を復活させたいものだ。(格闘技ライター・樋口郁夫)