10月28日にフィリップアイランドサーキットで行われたモトGP第17戦オーストラリアGPの決勝レースで、ふたりの世界チャンピオンが誕生した。ひとりはモト2クラスのマルク・マルケス。もうひとりは、最高峰モトGPクラスのホルヘ・ロレンソ。

マルケスは1993年生まれの19歳。2010年に17歳で獲得した125CCクラス(当時)王座に続き、今回のモト2クラスがキャリア2回目の総合優勝。25歳のロレンソは、2006年と2007年に250CCクラス(当時。現在のモト2クラスの前身)を連覇し、2008年からモトGPクラスへステップアップした。2010年に総合優勝を達成し、今回が2度目の最高峰制覇だ。両選手ともにスペイン人で、彼らの王座獲得は、ロードレース界が今まさにスペイン最強時代であることを強く印象づける結果になった。

なかでも、マルケスはモトGPの将来を担う逸材として、スペイン国外からも大きな期待が寄せられている。125CCクラスのタイトル獲得後にモト2クラスへステップアップした昨年は、いきなりチャンピオン争いを展開。初年度の王座獲得と同時にモトGPクラスへの昇格も噂された。しかし、シーズン終盤のレースで転倒を喫した際、右目の視神経を傷めてしまい、総合2位で一年を終えた。視力回復に予想外の時間を要し、今季の開幕前はこの治療のために事前の合同テストを欠席。満足な調整を行うことができなかった。「怪我をした直後は、すぐ治るだろうと思って心配もしていなかった。でも、(回復が長引いて)一カ月、二カ月と経つにつれ、本当に治るのだろうかと不安になった」と、このときの精神状態を振り返る。

しかし、開幕戦のカタールGPでは優勝して復活をアピール。以後のレースでもほぼ毎戦表彰台に上がる水準の高い走りで、ここまで8勝。数戦前から、マルケスの王座獲得はもはや時間の問題とみなされていた。

来季2013年は、ホンダワークスのレプソル・ホンダ・チームに加入することがすでに決定している。じつは今年まで、最高峰クラス昇格初年度の選手はサテライトチームに所属しなければいけない、という「ルーキールール」が存在した。ところが、マルケスをワークスチームへ加入させるために、今年半ばにこのルールが撤廃された。ことほど左様に、すでに大物ぶりを発揮している、というわけだ。来季のチームメイトは、同じくスペイン人で、毎年ロレンソと年間総合優勝を争うダニ・ペドロサ。ペドロサやロレンソがそうであったように、マルケスも初年度からの優勝争いが期待されている。

「今まではモト2に集中していたので、来年のことは考えなかった。でも、これからやっと、少しそっちにも気持ちを向けることができる。最終戦のバレンシアはプレッシャーから解放されてのびのび走れると思うし、そのレースが終われば、翌々日から来季に向けた事後テストもある。モトGPマシンで自分がどこまで走れるのか、今から来年が楽しみ」

マルケスたちの活躍をテレビや新聞で見た子供たちは、きっと憧れの選手と同じ高みを目指そうとするだろう。スペイン最強時代は、どうやら今後もしばらく続きそうだ。(モータージャーナリスト・西村章)