鈴鹿サーキットで日本人ドライバー3人目の表彰台を獲得した小林可夢偉。その翌週、再び可夢偉に注目が集まるなか、日本国内では、若手時代に同じ釜の飯を食べたドライバーが世界選手権に挑戦していた。元F1ドライバーの中嶋一貴だ。

中嶋一貴が戦ったのはFIA世界耐久選手権(WEC)。元F1ドライバーのアレクサンダー・ウルツ、元GP2ドライバーのニコラス・ラピエールとチームを組み、富士スピードウェイで開催された6時間耐久レースに、トヨタワークスチームの一員として出場し、見事優勝を飾った。

これだけ書くとただのレース結果報告だが、驚きは6時間を走行してトップチェッカーを受けたトヨタと、2位アウディのタイム差がわずか11秒2であったこと。ちなみに、F1の日本GPではトップのセバスチャン・フェテルと2位フェリペ・マッサの差は20秒6だった。この違いについて中嶋一貴に聞いた。

「F1では、周回遅れのマシンが譲らなければいけないルールがあるのですが、WECでは、それぞれのクラスでマシン同士が争っているので、上位クラスのマシンに道を譲るルールがありません。そのため下位クラスを抜くときに1周で2、3秒タイムロスすることがあります。なので、F1では11秒差のチェッカーはセーフティーマージンもある余裕の勝利ですけど、WECだと競り勝ったレースという感覚です。例えると、WECの10秒差は、F1だと後続マシンがミラーの視界に入っていてミスが許されない距離感、5秒差だと、もう後ろにピッタリとつかれているくらいの距離感です。

よくF1とWECの違いを聞かれますが、マシン的にはWECの中身はF1マシンです。ルールに合わせて形状が違うくらいで、最先端の技術が詰まったハードウェア的には違いはありません。違いがあるとしたら、WECもF1もチームスポーツですが、F1は、各個人が与えられた自分の仕事をパーフェクトにこなした調和としてチームワークになっていくのに対して、WECはそれにドライバーやスタッフ同士の“阿吽の呼吸"が追加される。より、チームの一体感が重要なスポーツですね。僕にとってもチームにとっても母国レースだったので、優勝後は本当に盛り上がりました」

小林可夢偉と中嶋一貴、この“サムライ"たちに、今後さらなる注目と応援が集まることを期待したい。(モータージャーナリスト・田口浩次)