二輪ロードレースには、モトGPとSBKというふたつの世界選手権が存在する。それぞれの正式名称は、日本語ではロードレース世界選手権、スーパーバイク世界選手権、と表記される。モトGPはレース用に専用設計したプロトタイプマシンで争い、SBKは量産車をレース向けに改造した車輌で争われる。実際の位置づけは、モトGPが1949年以来連綿と継続する二輪ロードレースの世界最高峰として君臨している。1988年に始まったSBKは、モトGPの第一線を退いた選手や将来的にモトGPを目指す選手たちが争う選手権、というカテゴリーだ。

世界各地で年間18戦(2013年は19戦予定)を転戦するモトGPはスペインに本拠を置くDORNAスポーツ社が競技を運営し、それよりも年間レース数の少ないSBKはイタリアのインフロントモータースポーツ社が運営している。競技の運営母体が異なることもあり、この両選手権はうまく棲み分けてきた。しかし、昨年、モトGP運営元のDORNAスポーツ社に出資する投資企業ブリッジポイントが、インフロント社の親企業を買収。両選手権の今後について一時期は様々な憶測も流れたが、DORNAスポーツ社が両競技を傘下におさめる形で存続する、という発表が今年10月2日に、まず書面の形で行われた。次いで、10月11日にDORNAスポーツ社CEOカルメロ・エスペレータが、モトGP第15戦の開催地・栃木県ツインリンクもてぎで記者会見を行った。

DORNAが新たに関与することになるSBKの将来像に大きな注目が集まるなか、この発表の場でエスペレータは、2013年はそれぞれの運営母体のもとで従来どおりの競技ルールとして選手権が行われる、と説明。だが、2014年以降のSBKについては、変更の含みを持たせる発言にとどまった。

回復の兆しが見えない世界的不況への対策として、DORNAはこれまでモトGPにさまざまなコスト削減策を導入してきた。タイヤのワンメーク化やエンジンの年間使用基数制限、テスト回数制限などは、何年もの経験を経て、現在でも適正なあり方の追求が続く。今後については。F1の世界ですでに実施されている電子制御技術(エンジンコントロールユニット)の統一、あるいはエンジン回転数制限なども提案され、大きな議論の対象になっている。SBKについてもやがて何らかの形で、類似した経費削減策は導入されてゆくだろう。

上記記者会見でエスペレータは、「この経済的苦境に対応し、両選手権がともに存続し発展できることを目指す」「両選手権の大きな目的は、費用の削減と娯楽性の増大」だと話している。再来年の2014年は、モトGPとSBKの歴史にとって、ルールや競技内容の大きな転換点になるかもしれない。(モータージャーナリスト・西村章)