第14戦アラゴンGPは、今年3回目となるスペインでのレースだ。1回目は4月末にアンダルシア地方のヘレスサーキットで開催された第2戦スペインGP。2回目はバルセロナ郊外の第5戦カタルーニャGP。そして、モーターランド・アラゴンで開催された今回の第14戦のあと、さらに11月には第18戦の最終戦バレンシアGPが行われる。一年のうちに一国で4戦が行われるのは、世界広しといえどもスペインだけだ。

この国では、モータースポーツ人気の高さを反映して1990年代後半から年間3戦が行われてきた。そこにモーターランド・アラゴンが加わったのは、2010年シーズンから。ハンガリーに建設中だったサーキットの工事が世界同時不況の影響で中断したため、開催地予備候補としてリザーブ契約を締結していた当地が、代替地としてカレンダーに組み込まれた。2009年9月に開業したばかりの新規施設だが、上記の事情により2010年にモトGPを初開催。その後も継続してグランプリが行われ、現在に至る。つい先ごろ、2013年の暫定スケジュールが発表されたが、アラゴンGPは全19戦のうち第15戦に組み込まれている。

このサーキットはバルセロナとバレンシア、そしてサラゴサを結ぶ三角形の中心に位置し、バルセロナからの距離は約250キロ。車で移動すると約3時間ほどだが、近代的なサーキットの周囲は、まったくといっていいほど何もない荒涼とした風景が広がる。英語で言う「middle of nowhere」(周囲に何もない僻地、の意)が、比喩ではなく正確な表現としてピッタリ当てはまる場所だ。周辺の小さな町には宿泊設備も少なく、チーム関係者ですら宿の確保にひと苦労もふた苦労も強いられる。そんな場所でも、2011年にはレースウィークの三日間総計で10万3222人が観戦に訪れた。

しかし、それほどモータースポーツ人気が高いお国柄でも、EU諸国を覆う不況は深刻な影を落としている。5月にスペインGPが行われたヘレスサーキットの動員は、昨年より4万9772人少ない18万4160人にとどまった。また、カタルーニャGPの開催地であるカタルーニャ自治州が8月末に中央政府に50億ユーロの支援を要請した件は、日本でも大きく報じられた。このような経済の低迷を考慮して、2013年は開催地を2カ所程度に減らすという情報も流れ、一時はその方向で調整も行われたようだが、現状では来年も従来どおりの4開催地で継続する方向だ。

9月30日の日曜に行われた決勝レースでは、スペイン人選手のダニ・ペドロサ(レプソル・ホンダ)が今季4勝目を達成。最大のライバルでランキング首位の、ホルヘ・ロレンソ(ヤマハ・ファクトリー)が2位に入った。モト2クラスとモト3クラスでもスペイン人選手が優勝して、スペイン人が3クラスを制覇した。しかし、三日間の観戦者数は、昨年実績を20パーセント下回る8万1158人。選手たちがどれほど活躍しても、減少する観客動員数の歯止めにならないこの事態は、まさにモータースポーツ大国ゆえの悩み、というほかないだろう。(モータージャーナリスト・西村章)