ロンドン五輪が終わってからずっと気になっていることがあった。直前まで柔道の日本代表を争い、そして夢破れた選手たちはどうしているだろう。日本が成績不振に終わったこの五輪を、どう観たのだろう……。先日、そんな代表候補の一人だった選手と話す機会があった。

男子90キロ級の西山大希(筑波大)。内股を得意とする攻撃的な柔道スタイルで、2010年の東京、2011年のパリ世界選手権では銀メダルを獲得したが、昨年末から不調に陥り回復できないままに5月の代表選考会を迎え、五輪出場を逃した。将来性を見込まれ、この3年あまりは数多くの試合と合宿をこなした一方、技を作り込む時間が不足し、フィジカル面でもかなり消耗した末の代表落ちだった。

しばらくぶりに声を掛けてみると、思いがけない答えが返ってきた。聞けば、8月はじめの練習で右膝の前十字靱帯を断裂し、手術をしたばかりだという。五輪期間中、大学の練習は休みとなったため実家でのんびりと過ごして気持ちを切り替え、道場に戻った矢先のアクデント。完全に試合復帰するには1年近くかかるという。試練が続いているのだ。

しかし、そんな重傷を負ったにも関わらず、西山の表情はさっぱりとしていて穏やかだった。「かえって休む時間になったと考えているんです。リハビリもあるし、しばらくはトレーニングに専念します。オリンピックを観ていて、外国人選手に勝つにはやっぱりパワーをつけなければいけないと思ったから」

気持ちはつながっている。そう思った。ロンドン五輪はさほど熱心に観戦しなかったというが、単なる傍観者ではなく、当事者としての視点がそこにある。だから思い切って聞いてみた。「自分の階級はどう思った?」。「自分が出ていたら、勝ってたなって思いました」。

「勝ってた」とは、つまり「金メダルを獲ってた」ということ。その率直な即答に、次こそはの熱が満ちている。90キロ級の日本代表、偶然にも同じ姓の西山将士(新日鉄)は奮闘の末、銅メダルを獲得したが、頂点には届かなかった。

ロンドン五輪以後、選手強化の方向性が固まらず、日本代表の未来は薄もやがかかったようにぼんやりしている。しかし、西山がふと見せた気骨は、そんなもやをすっきりぬぐい去ってくれそうな爽快感を放っていた。(スポーツライター・佐藤温夏)