ロンドン五輪に盛り上がったこの夏、F1は1カ月の夏休みに入った。ここまで20戦中11戦を終えて、我らが小林可夢偉は33ポイントを獲得してランキング10位。チームメートのメキシコ人、セルヒオ・ペレスが47ポイントを獲得して9位と、ザウバー勢は好調な2012年シーズンを過ごしている。

目立つ度合いではチームメートのペレスに分がある。何しろ2位と3位、二度の表彰台を獲得している。こうした記憶に残るイメージに引きずられることはどのスポーツにも往々にしてあるものだ。しかし、データを振り返ると、可夢偉の強さが見えてくる。入賞回数はともに5回だが、可夢偉はマレーシアGPではブレーキトラブル、モナコGPではスタート直後にロータスのマシンに当てられたことが原因のサスペンショントラブルでリタイア。さらにヨーロッパGPでは一時4位を走行し、優勝の二文字も見えたが、チーム側のピット戦略のミスでチャンスを失った。レースは結果がすべてのためタラレバは禁物とはいえ、少なくともあと3回は入賞していたと考えると、チーム側が可夢偉をエースドライバーとして扱っていることもわかる。可夢偉のマネージャーもこう補足した。

「今年のザウバーのマシンは競争力が高いです。そしてチームは可夢偉に対して、トップチームと同じレース戦略で戦っている。つまり正面勝負です。一方、ペレスにはギャンブル的な戦略を指示して、荒れたレースで前に行くリスクを取っている。なので、トップチームも可夢偉のタイヤ戦略などを注意深く見ています。可夢偉がスタート時に履いているタイヤや最初のピットインのタイミングで、その先のレース戦略が予測可能なので、自分たちの戦略との比較をするわけです。トップチームは皆、お互いの戦略を把握してレースを戦っている。可夢偉は既にそうした対象の存在なんです。結果だけでは見えてこない真価ですね」

今年、ザウバーで3年目を迎えた可夢偉。今年、優勝も狙えるポテンシャルを持つマシンC311は、つねにチームエンジニアたちと開発の方向性や、データ収集で共に協力してきた。可夢偉の真価は、9月2日決勝レースのベルギーGPから始まるシーズン後半戦で証明されるはずだ。(モータージャーナリスト・田口浩次)