例年、シーズン中盤ともなると、トップ集団チームとそれ以下のチーム差は非常に大きくなる。しかし今年のF1は違う。いまだ予選のQ3に入ることがトップチームでも難しい状況だ。そんななか、第10戦ドイツGPでは小林可夢偉が自身最高位となる4位入賞を果たした。2位表彰台だったセバスチャン・フェテルがレース中に発生した追い越し違反によるペナルティタイムの加算で、5位から4位へと順位が繰り上がったが、それも可夢偉のレース内容が良かったからこそ得られた幸運だった。

数学的な話になるが、レース順位というのは、当然トップのゴールからタイムが遅れるほど順位は低くなる。例えばレース中1周あたりのタイムがトップより0・1秒ずつ遅いドライバーと、0・2秒ずつ遅いドライバーがいた場合、60周すると単純計算で前者は6秒、後者は12秒トップより遅くなる。これにタイヤ交換などのピット作業時間の差や、遅いマシンが前にいて抜きあぐねる状態が加わり、さらにトップとの差は広がっていく。

今回の可夢偉が素晴らしかったのは、2回目のタイヤ交換を終えてコースに戻った44周目を終えた時、トップを走るフェルナンド・アロンソとのタイム差は30秒19あったものが、67周のゴール時は21秒93に縮まっていたこと。つまり、23周の間に8秒29も差を縮めるほどアロンソより速かったことになる。さらに言えば、1回目のタイヤ交換後の23周目を終えた時点でのアロンソとの差は24秒93。そしてアロンソが2回目のタイヤ交換をする直前だった41周目を終えた時点での差は24秒07だった。18周にわたってアロンソと変わらないタイムの走りを見せていたことになる。他に優勝したアロンソと常に同等以上に走っていたのは、2位チェッカーを受けたフェテルと3位チェッカーを受けたジェンソン・バトンしかいない。

つまり、今回は予選12位スタートで最初のタイヤ交換までに差が広がってしまった。もし予選6位以内でスタートしていれば、十分優勝争いに絡めた計算になる。スポーツに「タラレバ」は禁物だが、日本人初の優勝の可能性を期待させるほど、パドック内でも存在感が大きくなっていることだけは間違いない。(モータージャーナリスト・田口浩次)