近代ボクシング発祥国の伝統と威信に懸けて、ロンドン五輪の英国代表チームは勝ちを狙ってくる。地元メディアにノルマとして掲げた目標メダル獲得総数は、金2個を含む5個。とりわけ熱い注目を浴びているのは、スーパーヘビー級の22歳、アンソニー・ジョシュア。グローブを初めて握ったのが18歳の時だから、どれだけ突出した素質に恵まれているかが理解いただけるはず。

昨年の世界選手権(バクー大会)では、決勝で地元アゼルバイジャンのマゴメドラスル・マドジドフに不運なポイント負けゆえ、その復讐劇の行方も気になるところ。ともかく、現地の報道では、男女10名から成る英国五輪代表チームにかかる期待とこれを脅かす諸外国の強豪勢に関する情報が交差し、決戦ムードは最高潮に高まりつつある。

英国勢に立ちふさがる「名階級の最大の脅威」を紹介したクリス・マッケンナ氏による月刊「ボクシング・マンスリー」誌7月号の展望記事は、本邦では未だ正当にその偉業が評価されているとは言い難い世界選手権準優者の26歳、村田諒太(東洋大・職)の健闘を、これまでで最も正しく称えたものかもしれない。

ライト級では、北京五輪と世界選手権の両大会の覇者ワシル・ロマチェンコが「最大の脅威」なのは当然として、ミドル級最大の強敵は日本の村田だと言わしめているのだ。昨年の世界選手権で出場者最多の同階級で勝ち上がり、過去2階級で世界王者のアッボス・アトエフ(ウズベキスタン)を破った実績は、このような形で評価されていた。

村田の階級が、ある世代以上のファンには、日本人に絶対手が届かないと信じられていたミドル級であり、他方、近年まで世界のアマの商業主義化に反発し、孤高の鎖国化を選択していたかのような日本の事情も考えると、日本人史上唯一の世界戦選手権決勝進出を果たした村田の快挙は2重、3重の意味でも価値がある。

ミドル級の英国代表は、ナイジェリア人の父を持ちエキゾチックな容貌からモデルとしても活躍する(最近では裸身も披露)23歳のアンソニー・オゴゴ。2005年のリバプール開催の「アンダー17」世界選手権優勝者で早くから将来を嘱望されていたオゴゴだが、マッケンナ氏によれば村田は危険極まりない「避けたい相手」なのだ。これこそ、村田への最大の賛辞ではないか!(草野克己)