EU諸国内の各種不安要素が原因で、外為市場では歴史的な円高ユーロ安が続いている。ここ数週間の懸念材料としてよく話題に挙がるのは、スペイン大手銀行バンキアの経営不安と政府救済による実質的国有化だが、じつはこの銀行はモトGPの世界とも大きな関わりを持っている。

スペインでは昔からモトGPの人気が非常に高く、有名選手は様々な業種のイメージキャラクターに採用される。銀行業界でも、広告宣伝活動で人気選手を起用するのはけっして珍しいことではない。現在のユーロ安の一因となっているバンキアも、モトGPの世界で広告活動を行っている。同行はホルヘ・マルチネス率いるチーム・アスパルのモト3クラスのメインスポンサーで、「バンキア・アスパル・チーム」という名称でメディア露出を果たしているのだ。

マルチネスは1980年代から90年代にかけて活躍した同国の英雄で、現在はモト3、モト2、モトGPの全クラスでチームを運営している。一方、バンキアは、2010年に7つの貯蓄銀行が合併してできあがった銀行で、この前身7行の一社であるバンカハがマルチネスのチームをスポンサードしていたことから、合併後も関係が継続し、同チームを支えることになった。余談になるが、このバンキアに吸収された7行のうち株式構成率で最大を占めるカハ・マドリーも125CCクラス(当時)の有力チームをスポンサードしていたことがある。2002年には日本人選手の宇井陽一が所属し、現在モトGPクラスで活躍するホルヘ・ロレンソも宇井のチームメートとして世界選手権デビューを果たしたので、熱心なファンなら企業ロゴに見覚えがあるかもしれない。

バンキアに話を戻すと、昨年はバンキア・アスパル・チームのニコ・テロルが125CCクラスで年間総合優勝を達成。今年はモト2クラスにステップアップした。また、モト2クラスとモトGPクラスでも、主力ではないながらバンキアはマルチネスのチームにスポンサードをし、マシンやチームウェアに自行のロゴを貼付している。

経営不振と今回の実質的国有化は同行にとって深刻な問題であることは疑いないが、チームをよく知る関係者によると、今シーズンはスポンサー契約が有効である以上、シーズン中の撤退はありえないだろう、と話す。スペインの世論やメディアの論調も、国有化に際してモトGP活動の自粛を強く迫るような雰囲気ではないようだ。このあたりは、日本との国情の差が強くあらわれているようにも感じる。これはおそらく、スポーツや文化を支える責任に対する、彼我の考え方の違いによるものなのだろう。

6月3日に行われた第5戦カタルーニャGPは彼らのホームグランプリだったが、このレースでバンキア・アスパル・チームに所属するエクトル・ファウベルは、最終ラップまで大集団の激しい2位争いを展開し、7位でチェッカーを受けた。企業は国民的人気競技で自国チームを支える面目を保ち、チームも経営の苦しい企業の支えにしっかりと応えた、といえる内容と結果だ。だが、来年度以降は、さすがにモータースポーツが人気のお国柄とはいえ、おそらく今年と同様というわけにはいかないのだろう。(モータージャーナリスト・西村章)