スーパースターの座に君臨していた世界ボクシング機構(WBO)ウエルター級王者マニー・パッキャオ(フィリピン)が実に7年ぶりの黒星を喫した。9日、米ネバダ州ラスベガスでWBOスーパーライト級王者ティモシー・ブラッドリー(米国)を相手に4度目の防衛戦を行ったが、終盤に失速。1―2のスプリットデシジョンで敗れる大波乱だった。

試合はどちらに手が上がってもおかしくなかった。前半はパッキャオが持ち前のパワフルな強打でポイントを挙げた。やや強引な面もあったが、ブラッドリーは気迫に押され、調子が出ない。何とか巧みなディフェンスワークでかわし、カウンターを狙ったが、クリーンには打ち込めない。ただ、パッキャオも決定打不足。ミスブローも目立ち、次第にスタミナを失った。

9回が終わり、パッキャオが明白にリードしていた。このまま判定勝ちが順当な見方だったが、10回から急に動きが鈍くなる。目に見えて手数が減り、ブラッドリーの攻撃に反発する余裕はなかった。最後の3ラウンドを失い、終了のゴング。小差でパッキャオと見る向きも多かったが、オフィシャルはブラッドリーを支持した。採点の内訳は2人が115―113でブラッドリー、もう1人は同じ115―113でパッキャオと競っていた。その瞬間、場内は判定を不満とするブーイングが沸き起こった。しかし、意外にもパッキャオは淡々としていた。これは闘志の衰えだろうか。

国会議員も兼職するパッキャオは昨年11月、ファン・マヌエル・マルケス(メキシコ)戦で小差の判定勝ちを収めたが、内容に乏しく、「どうした!パッキャオ」の声が飛んだほど。もうプライトが許さない。汚名返上とばかりにこの試合に向け、精神を集中。KO防衛を自らに科し、リングに上がったのだが…。既に33歳。ボクサーとしてのピークを過ぎ、心技体が伴わないのも仕方のないところだろうか。

ボクシング界にとってこの敗戦のショックは大きい。ファン垂涎の夢のカード、不敗の5階級制覇王者フロイド・メイウェザー(米国)との“世紀の対決"がすっかり色あせた感がある。スーパースターの激突は、お互いが「旬」でないと盛り上がらない。もし、2、3年前に真っ向勝負が実現していたら、間違いなく歴史に残る熱戦が繰り広げられたはずだ。パッキャオの快進撃が止まり、なぜか空虚な気分である。(津江章二)