元K-1王者で、現在は総合格闘技で闘っているアリスター・オーフレイム(オランダ)が、ドーピング違反によって米国ネバダ州のアスレチックコミッションから9カ月の出場停止処分を受けた。UFCは、契約前に一切の薬物を使用していないことを強調しながらこの有り様に激怒。契約解除も考えているという。

伝え聞くプロ格闘技の状況を考えれば、ドーピング違反自体はさして驚くことではない。UFCが薬物使用に関してしっかりした姿勢を持っていることを感じ、総合もスポーツへの道を歩んでいると感じた。

一方で、PRIDEでもファイトしたことのあるフィル・バローニ(米国)が格闘技サイトで「最強になるためなら何をしたって構わないはずだ。首を絞められたり頭を蹴られたりする方が本当に危ないし、テストステロンやステロイドよりもよっぽど危険だ」と発言。オーフレイムは運が悪かったとし、「PRIDEは最高の舞台だった」と、同団体のリングでは薬物使用が行われていたことを暗に示した。

スポーツへの道を歩もうとする世界最大の総合格闘技団体と、それを否定する選手。今後、どちらの勢力がまさっていくかは分からないが、世界的な統一組織がない世界だけに、アンチ・ドーピングの動きはなかなか進まないことが予想される。

「選手の健康を守るためのドーピング検査」と言ったところで、「命が短くなっても構わないから、最強になりたい」と考える選手にとっては馬の耳に念仏だろう。

筆者は、薬物使用というのは一種の「凶器の使用」だと考える。ボクシングの選手が、グローブの中に自分の拳は痛まない特殊な金属を入れて闘い、それで勝ったからといって、その選手を王者と呼べるだろうか。それが「最強」になるのだろうか。

「勝てばいいんだ」と言うのなら、武器を隠し持ってそれで一撃して勝っても、「最強」ということになってしまう。

格闘技とは鍛え抜かれた選手同士の闘い。筋肉増強剤などで肉体をつくった「サイボーグ」は、人間の闘いに入って来ないでほしい。(格闘技ライター・樋口郁夫)