意識して見なければ気にならないかもしれないが、言われてみれば気がつくだろう。20年目を迎えたJリーグで、ある“ルール"が変わった。今季、ユニホームのシャツをパンツに入れず、裾を出した状態でプレーすることが認められるようになった。もともと競技規則には明記されていなかったが、日本では「見た目にいい印象を与えない」「マナーや身だしなみ」などの観点から、シャツをパンツに入れることが「ローカルルール」となっていた。それが撤廃された。

最も大きな理由が、国際基準に合わせたという点だ。日本サッカー協会の松崎康弘審判委員長が「バルセロナのメッシも、ドルトムントの香川も、いつも出している」と言うように、海外では多くの選手がシャツを出してプレーしている。今や「紳士の国」でさえ、イングランド代表やプレミアリーグでシャツを出してプレーする選手が目立つ。一方、昨季までJリーグではシャツを出している選手がいると、プレーが止まった時に主審が注意してパンツに入れるよう促してきた。ただ「選手が従わなくてもイエローカードを出せるわけじゃなかった」(松崎委員長)ということもあり、いちいち選手に細かく注意するのは主審にとっても余計な負担になっていた。

シャツを出す選手が増えてきた理由として、最近のユニホームが細身になってきたことも挙げられる。ひと昔前はシャツを出すと、ダボっとしてややだらしなく見えたのが、最近はシャツを出しても裾が短くてタイトなつくりのため、すっきりとしたシルエットを保っている。過去の写真を見ると、一目瞭然である。90年代のJリーグではカズもジーコもストイコビッチも、みんなシャツを入れていた。ワールドカップ(W杯)でも10年前の2002年日韓大会では、ほとんどの選手がシャツをパンツに入れている。それが06年ドイツ大会では裾を出す選手が目につくようになり、10年南アフリカ大会で一気に増えた。

以前から関係者の間では「海外ではみんな出しているのに何で日本は駄目なんだ?」「夏は暑いから、熱がこもらないようにシャツを出した方がプレーしやすい」といった声も上がっており、今回の変更は時代の流れに沿った、ごく自然なものといえる。昨季J1で優勝した柏は、マッチコミッショナーによる試合後の報告書で「レイソルはシャツを出している選手が多い」と指摘されることもあったというが、これからはそんなこともなくなる。Jリーグでは今後も試合前の入場時はシャツを入れるよう指導していくというが、3月11日に行われたJ1開幕戦の柏―横浜Mでは両チームの先発メンバー中、実に半分の11人がキックオフ前からシャツを出していた。

自分自身もサッカーをしていた頃は、背中部分を入れ、前は出して折り曲げる(最初は入っているように見えるが、走れば自然と出てくる)という隠れシャツ出し派だった。賛否両論はあるだろうが、うまい選手がシャツを出していれば格好よく見えるし、ミスをした選手がシャツを出していればだらしなく見える。

かつてマンチェスター・ユナイテッドの伝説的なスター選手だったジョージ・ベストや、元フランス代表のミシェル・プラティニのように「シャツ出し」がトレードマークの選手がいた。みんながみんなシャツを出すようになると、シャツ出しは個性でなくなり、それはそれで少し寂しい気もする。

田丸 英生(たまる・ひでお)1979年生まれ、東京都出身。共同通信名古屋、大阪運動部を経て、09年12月から本社運動部。担当はサッカー、ボクシング、相撲。