2012年のモトGPは、残念ながら最高峰のモトGPクラスから日本人選手がいなくなってしまったが、中排気量クラスのモト2には高橋裕紀と中上貴晶、小排気量のモト3に藤井謙汰、という3名が参戦する。27歳の高橋はモト2クラス3年目で、この春に高校三年へ進級する藤井は今年が世界初挑戦。一方、中上はこの2月に20歳になったばかりだが、2008年と09年に125CCクラスにフル参戦しており、今回が世界への再挑戦となる。

2006年に全日本ロードレース選手権GP125クラスのチャンピオンを獲得し、史上最年少記録を更新した中上は、モトGPアカデミーとしてスペイン選手権にも参戦し、2008年に16歳という若さでモトGP125CCクラスへのフル参戦を実現した。だが、09年までの二年間では5位を2回獲得したのが最高で、08年の総合順位は24位、09年は総合16位という成績に終わり、シートを喪失。2010年は戦いの舞台を全日本選手権へ戻すことになった。

モト2でのグランプリへ復帰を照準に据えた中上は、全日本ST600クラスにエントリー。2011年にはモト2の規格により近いJ-GP2クラスへ参戦し、5勝を挙げてチャンピオンを獲得した。また、この年の秋にモトGP日本グランプリへ参戦した際は、怪我により決勝レースの走行こそ断念したが、予選まで高水準の走りを披露し、マシンのセットアップ能力を含めて、チームから好評価を得た。そして、この際にエントリーしていたイタルトランスレーシングチームからの2012年参戦が決定した、というわけだ。

春からの復帰を前に、2月のテストではトップタイムも記録した。3月19日から21日までスペインのヘレスサーキットで行われたモト2とモト3クラスの合同テストでは「トップタイムで三日間を締めくくって気分よく開幕を迎えたい」と話していた中上だが、二日目と三日目に転倒を喫し、順位面では11番手に甘んじた。

「現在の心境はもちろん悔しいけれど、転倒前までは悪くなかったし(開幕戦の)カタールへ行けば状況も違ってくる。第2戦でヘレスへ戻ってきたときのことも考えながら、対処していきたいと思います」

そう語る言葉の端々には、実際の年齢以上の自信と落ち着きのようなものもにじみ出ている。おそらく、早い年齢で経験した挫折と臥薪嘗胆の二年間が中上を人間的にも大きく成長させたのだろう。

「全日本では、ライダーとしてのスキルとメンタルの双方で、とてもたくさん勉強をさせてもらいました。チームも自分も、当然、上位フィニッシュを狙っているので、自分をアピールする走りをできれば、結果もおのずとついてくると思います」

2012年第1戦カタールGPは、恒例のナイトイベントとして現地時間4月8日夜に決勝が行われる。中上たちの活躍を愉しみに、レースの日を待ちたい。(モータージャーナリスト・西村章)