2月に入り、F1の世界では各チームから新車の発表が続々と始まっている。ヨーロッパにおける景気の落ち込みは当然F1にも大きな影響を与えていて、今年は裕福なトップチームでさえ、例年数千万円をかけた豪華絢爛な発表会は行わず、自前の工場から世界へWEB中継したり、テスト走行する現場で簡易な発表会を行ったりと、すっかり倹約モードだ。

そしてもうひとつ、今年のF1で大きな変化を与えたのが、ドライバーへの安全性を高めるために採用された、フロントノーズと呼ばれるマシン先端部分を低くすることを義務づけたルール変更だ。従来の高い位置にあるノーズだと、クラッシュなどが発生したとき、ノーズ部分がドライバーを守る車体のプロテクタ部分ではなく、ヘルメットなどを直撃する恐れがあったのだ。しかし、その一方で、ほとんどのマシンのフロントノーズはなだらかな流線型ではなく、タイヤの先から段差がついた形状になり「カモノハシ形状」などと呼ばれている。その結果、一部のF1マシンのデザイナーから注目を集めているのが、既にカモノハシ形状を採用している日本の新幹線だ。

日本が世界に誇る新幹線。現在、N700系やE5系といった「カモノハシ形状」を誇る車両が走行している。このカモノハシ形状のどこに注目しているのか? チームのエンジニアに聞いてみた。

「もちろん、F1と新幹線は求める性能や、走行条件がまるで違うので、新幹線の形状がそのままF1に生かされるわけじゃない。でも、新幹線があのようなユニークなノーズ形状になったのは、空力を追求した結果だ。であれば、新幹線のノーズ形状を分析することで、F1マシンのノーズにもアイデアを転用できるかもしれない。地上を時速300キロ以上のスピードで、かつ空気の流れをコントロールすることの重要性が高い工業製品は多くない。日本の新幹線はトンネルも多く、空力面でさまざまな課題がある。それを調べることは決して無駄にはならないだろうね」

各チームの新車を見渡すと、すでに新幹線をイメージさせるノーズ形状のマシンもあり、シーズン開幕後、より新幹線に似た形状に進化するのか、まったく別形状になっていくのか、そんな視点でF1レースを見ることも、意外と楽しいのかもしれない。(モータージャーナリスト・田口浩次)