「世界を震撼させたミニマム」昨年10月24日、東京でWBA世界同級王者ポンサワン・ポープラムック(タイ)と手に汗握る打撃戦の末、10回TKO勝利で王座を獲得した八重樫東(大橋)にこの称号を贈りたい。英国の月間専門誌『ボクシング・マンスリー』今年度1月号に、全米ボクシング記者協会のエリック・ラスキン氏がYouTubeの功績、その普及により世界各地の重要な試合を見逃すことがなくなった現況についての記事を寄稿しており、ポンサワン対八重樫戦の壮絶な試合の写真も掲載されている。このWBA世界ミニマム級戦こそ、ラスキン氏によれば、2011年の年間最高試合であるからなのだ。

BWAAの略称でも知られる全米記者協会は、1926年設立の由緒ある団体で、毎年、投票による年間最高試合を選定しており、同記事では、2006年度の年間最高試合を、全米ではテレビ放映されなかったフランス開催のWBA世界スーパーバンタム級タイトルマッチ「マヤル・モンシプール(仏)対ソムサク・シスチャチャワン(タイ)」戦が受賞した背景には、動画の存在が決定的だったことを明かしている。痛快なのは、同年に英国で実現した40戦全勝のWBO世界スーパーミドル級王者ジョー・カルザーギ(英)と21戦全勝のIBF同級王者ジェフ・レイシー(米)の統一戦を年間最高試合として選出しようという動きがあったことを馬鹿げたことだと断言していること。カルザーギの一方的に優位な判定に終わった同統一戦よりも、なるほど最後までどちらに勝利が転ぶかわからない手に汗握る展開の試合こそ、最高試合に相応しいはず。

ところで、全米ボクシング記者協会は昨年度の年間最高試合を、昨年12月3日ニューヨークでの「パウエル・ウォラック(ポーランド)対デルビン・ロドリゲス(ドミニカ)」戦に贈っており、ラスキン氏の記事を掲載した翌月の『ボクシング・マンスリー』誌選定の2011年度の国外年間最高試合は、昨年11月5日メキシコでの「ジェームス・カークランド(米)対アルフレード・アングーロ(メキシコ)」戦が受賞している。だけれども八重樫が「世界を震撼させたミニマム」である事実に違いはない。ラスキン氏は、上記2試合と比較した上でなお、「八重樫対ポンサワン」戦を年間最高試合と称えているのだから。(草野克己)