こんなに体も心も疲れるものとは思っていなかった。年末年始にドイツとオーストリアの4試合で争うノルディックスキーのジャンプ週間取材のことだ。といっても、久しぶりに日本勢が活躍してくれたから、原稿を書いたり取材をしたりがつらかったわけではない。雪不足のはずの欧州で連日、雪と氷雨にたたられ、とにかく移動が苦しかった。

試合後、記事を送信してから真っ暗の山道、それも雪で覆われたくねくね道をレンタカーでひた走った。雪にライトが乱反射して前は見にくいし、少し気を抜くとずるずる横滑りしそうになる。昼間の移動でも高速道路は雪の影響で大渋滞している。予定を大幅に遅れて移動先のホテルに到着すると、体はこわばり、下着は嫌な汗で湿っていた。

ワールドカップ(W杯)で欧州を転戦する日本のスキー選手たちは車で長距離移動を強いられることが常だから、大変だ。もちろん運転をコーチやスタッフに任せてはいるが、狭い車中で長い時間窮屈な思いをすることには変わりがない。今季W杯遠征に加わったジャンプ男子の20歳、小林潤志郎(東海大)は「移動をはさむとフォームが少しずれてしまう」と漏らした。序盤はW杯得点(30位以内)を重ねたが、W杯を兼ねたジャンプ週間では何度も「しっくりこない」と首をひねり、W杯得点を獲得できたのは4試合で1度だけだった。

ジャンプ女子は昨季までチームの予算が少なく、遠征で使用できるのはスキーを運ぶワンボックスカー1台だけだった。長いスキーの脇で選手たちが体を曲げたまま耐えていたそうだ。だが2014年ソチ冬季五輪で初採用が決まり、今季は支援態勢が強化された。遠征中にチームで使える車がもう1台増え、渡瀬弥太郎チーフコーチは「選手たちの負担が減った」と喜んでいる。

ジャンプ週間の総合優勝を4年連続で制したオーストリア勢は、グレゴア・シュリーレンツァウアー、トーマス・モルゲンシュテルンらチームのトップ選手の写真が飾られた大型バスで移動している。70万ドル(約5400万円)以上といわれるバスには選手が横になれるベッドが並び、ゆったりしたソファやキッチンもある。この豪華バスが常にオーストリア勢が安定して力を発揮できる一因なのだろう。車移動のつらさを骨身に染みて感じただけに、一層そう思った。

伊藤 慎吾(いとう・しんご)1973年生まれ。福岡県北九州市出身。98年共同通信入社。サッカーの2002年、06年ワールドカップやアテネ、バンクーバーの夏、冬五輪を取材。11年からロンドン特派員としてサッカー、スキーなど幅広くカバー