ボクシングの人気復活の切り札として、世界王者同士の対決実現に期待感が高まっている。ミニマム級のWBC王者・井岡一翔(井岡)とWBA王者・八重樫東(大橋)の一戦だ。ともに最軽量級ながらKOが持ち味のパンチャー。両陣営とも前向きな発言をしている。後は興行権、テレビ局の問題などがクリアされるかどうか。世界王者の権威を維持するためにも関係者の決断が待たれる。

昨年の大みそか。大阪で行われた井岡の2度目の防衛戦は圧巻だった。開始から間もなく会心の左アッパーを決めると、相手はキャンバス深く沈んだ。1回1分38秒のTKO劇。これは日本人ボクサーの世界戦KOタイムとして2番目のスピード決着で、国内では最短だった。あまりの強さに8000人のファンはただ驚くだけ。本人も「こんなに早く終わるとは思わなかった」という。積極的な姿勢が好結果を生んでいるようだ。

しかし、井岡にも悩みがある。減量苦だ。フライ級がベスト体重でもあり、ミニマム級では限界に近づいている。陣営が複数階級制覇を視野に入れているのも事実だ。そこで浮上したのが八重樫との対決である。井岡も「興味がある」とコメントしており、八重樫に勝って弾みをつけるのが最高の形だろう。

一方、大みそかに八重樫は横浜文化体育館にいた。ダブル世界戦のテレビ解説を務めたが、井岡の快勝を伝えられると表情が厳しくなった。「彼との対決が実現すればボクシング界は盛り上がると思う。自分も頑張る」と話し、大橋秀行会長も「OKです。いつでもどうぞ」と歓迎の様子だ。八重樫も昨年10月に激闘の末、10回TKOで王座を奪取し、高い評価を得ている。ここは逃げるわけにはいかないはずだ。

世界のボクシング界は今年に入り、王者の権威を高めるために動き出している。WBAが不評だった暫定王座をなくす方針もその一つだ。「チャンピオンは一人」がファンの本音である。統括団体が乱立し、さらに暫定、スーパー、休養…。王者の権威は薄らいでいくばかりだった。そのためにも「王座統一戦」は起爆剤になる。井岡VS八重樫。もし実現すればスリル満点の攻防は必至だ。お互いのプライドを懸けた戦いは、間違いなく人気向上につながる。(津江章二)