今回のDeNAの横浜球団買収を見ていて、新球団名が「モバゲー・ベイスターズ」だったら、どうなっていたかと思った。

というのは、球団名に企業の名前を付けることが当たり前になっている日本のプロ野球で、この商品名そのものズバリの球団名なら、その賛否が巻き起こることを期待したかったからだ。

▽かつては「都市名とニックネーム」

プロ野球も草創期は、米メジャーに倣って都市名とニックネーム、あるいはどちらかだったりする球団が主流だった。「東京巨人」や「大阪タイガース」のように。余談だが、球団の歌「六甲颪(おろし)」の「オゥオゥ…阪神タイガース」は当時「オゥオゥ…大阪タイガース」だった、と阪神の球団史にある。

戦後、2リーグになってからは、あっという間に企業名球団がほとんどとなり「親会社の広告塔」として歩み出したのである。電鉄、映画、新聞社などが球団を所有し、野球好きな名物オーナーもいた。その結果、一部を除き、球団経営は親会社の広告宣伝費で賄われ、経営努力をしなくても球団は存続した。

と同時に、球団内にプロスポーツ経営者やチームづくりの専門家(GM)などが育たなかったというデメリットも生んだ。だから、親会社が傾けば球団を手放すしかなかったである。現在のパ・リーグ6球団はすべて経営母体が替わった。その流れがセ・リーグにもおよんでいるということだ。

▽パで成功の地域密着型

要は企業名球団ではなく、各地域にフランチャイズを確立した地域密着型球団がいいと思う。そのために、まず球団名から企業名を外す議論ぐらいはしてもいいだろう。苦難の繰り返しだったパが北海道、東北、九州で成功を収めている、いい先例がある。

75年の歴史を持つプロ野球が「公共性」を有するとともに、なにより「ファンのもの」だという認識に立たないと、未来は開けないと思っている。今回の球団買収を見ていて、そうした観点からの指摘が少なかったと感じている。

▽今後も身売りは続く?

なるほど、2004年の楽天球団誕生に至った球界再編騒動では、ファンの後押しで12球団制が維持された。今は、これ以上球団を減らしたくないということから、とにかく横浜球団の受け皿を探した結果だったのだろう。だが、プロ野球人気は映像メディアなどでは下降線をたどっている。身売り球団が続かないとも限らないのである。

今日では球団も近代化され、親会社も連結決算を求められ時代となり、球団経営にも厳しい目を向けられるようになった。2007年には、パ6球団により共同事業会社「PLM」を設立して、リーグ統合型のビジネス展開に取り組んでいる。

こうした動きをセ、パ両リーグに広げ、いまよりパイを大きくする努力をするべき時期にも来ているとも思う。米国野球通の加藤良三コミッショナーは、メジャー経営のいい所をもっと訴えるべき役割と思うが、黒字のセ一部球団から猛反発を受けるだろう。

▽メジャーは全球団が運命共同体

巨人の渡辺恒雄球団会長は今回の買収に関連して「本当はパナソニックやソニー、日立とかの一流企業が球団を持ってくれるのが望ましい」と言ったそうだ。そうした一流企業の経営者が今のプロ野球の赤字体質を見たら、とても手を出しそうにないと思うし、逆にメジャーのように「全球団運命共同体」として、全体で生んだ利益の配分を求めるかもしれない。それなら面白いのだが。

ヤクルトは1970年から本格的に球団経営に乗り出したが、当時の松園尚巳オーナーは独占企業体のプロ野球だから、各球団の利益に加えて球界全体の「利益配分」にあずかるものとばかり思っていたそうだ。ところが、実際は違いびっくりした、と本人から聞いたことがあった。普通の経営者ならそう思うだろう。そうした考えが主流になることを願うしかないのだろうか。

田坂貢二[たさか・こうじ]のプロフィル1945年広島県生まれ。共同通信社では東京、大阪を中心に長年プロ野球を取材。編集委員、広島支局長を務める。現在は大学野球を取材。ノンフィクション「球界地図を変えた男 根本陸夫」(共著)等を執筆。