よく言われることだが「ワールドシリーズ」という名称は不遜というか、傲慢(ごうまん)だと思っていた。米国内のプロ野球リーグの頂上決戦なので「ナショナル・シリーズ」、カナダにトロント・ブルージェイズがあるから「北米シリーズ」とは言えても「世界」はやり過ぎとツッコミを入れたくなる。

もちろん日本人メジャーリーガーに限らず、韓国や台湾、キューバ、ドミニカ共和国、プエルトリコなどから、多彩な顔ぶれが集まっているのは事実。「レベルの高い戦い」だったり、素直に「高額年俸」を求めて海を渡る選手は少なくない。それだけの魅力があることは確かだ。

ことしは11度目の頂点を目指す古豪セントルイス・カージナルス(ナ・リーグ)と、球団創設51年目で初制覇を狙うテキサス・レンジャーズ(ア・リーグ)が対戦した。最初の印象は、地味な顔合わせ。東海岸の名門ヤンキースやレッドソックス、フィリーズが敗退。レンジャーズは一応西地区だが、日本人になじみの深い西海岸からは遠く、地図上はアメリカのど真ん中に位置するテキサス州アーリントンを本拠地としている。

さらに悪いことに不調だった上原、故障選手の復帰にともなって枠のなくなった建山、の両日本人投手がレンジャーズの登録から外れ、日本国内の注目度は下がってしまった。

しかし、ふたをあけてみれば予想を裏切られた。「三冠王に最も近い」と評されるカージナルスのプホルスが第3戦で3連続本塁打を放つ。1試合3本塁打はあのベーブ・ルースが2度、「ミスター・オクトーバー」と呼ばれたレジー・ジャクソン(ともにヤンキース)が1度やって以来史上3人目の快挙で、カージナルスの選手が「孫の代まで自慢できる」と話したのが印象的だった。

弁護士資格を持ち、緻密な戦術で知られるカージナルスのラルーサ監督と、かつてのコカイン吸引を認め昨季から2年連続してワールドシリーズに導いたレンジャーズのワシントン監督。好対照の指揮官が率いるチームの激突は、見応えがあった。

雨で1日順延となったあと、カージナルスが2勝3敗で本拠地に戻った第6戦は特にすごかった。九回、そして延長十回と、ともに2点差を追うカージナルスが2死、2ストライクから信じられない粘りで追いつく。延長十一回にサヨナラホームランを打ったフリースは、五回に捕球し損なったボールを頭に当てた三塁手だった。この試合はテレビの視聴率もよかったという。

地元で優勝を決めたカージナルスのファンの熱気にあおられた部分もあるが、終わってみれば本場の「ベースボール」の面白さは、やっぱり「ワールドクラス」だな、と妙に納得してしまった。

木村 壮太(きむら・そうた)1973年生まれ。横浜市出身。97年共同通信に入社後、相撲、プロ野球(オリックス、阪神、横浜)、モータースポーツなどを取材。2007年からボストン支局に赴任し、レッドソックスを中心に大リーグなどを担当。