すでにロンドンへの切符を手にした“なでしこ"。いまや国民的注目を集める女子に続き、男子のU22(22歳以下)日本代表が五輪出場権を懸けてアジア最終予選を戦っている。

その最初の山場となるのが、中東勢との2連戦、バーレーン戦(11月22日・アウェー)とシリア戦(11月27日・ホーム)だろう。

▽ワールドカップより「狭き門」

本大会では23歳以下の代表チームに、年齢制限のないオーバーエイジ選手3人を加えることのできる五輪。アジアに与えられた枠は3.5。ワールドカップの4.5と比べても狭き門だ。

現在、アジア最終予選に残っている国は12カ国。それが3グループに分かれ4チームのリーグ戦を行い各グループの1位が出場権を獲得。2位チームはプレーオフを戦い、勝者がアフリカとの大陸間プレーオフを行う。

▽どんな集団でも、一番は難しい

最終予選の組み合わせを見たとき、他のグループに比べれば楽では ないか思えた日本の入ったC組(シリア、バーレーン、マレーシア)。しかし毎回繰り返すことだが、どんな集団にあっても一番になるのは、 そう簡単なことではないということを失念していた。

マナマで行われたバーレーンとの一戦。結果的に日本は2-0の勝利を収めたわけだが、内容的にはバーレーンが勝利を飾ったとしても決しておかしくなかった。

最終予選の初戦でシリアに1-3と敗れている バーレーンは、アジア大会の王者を相手にも、いわゆる中東チーム独特の守備を固めてのカウンターを狙う戦術ではなく、積極的に前線からのプレスを掛け勝利を狙ってきた。

▽もし決められていたら…

そして攻め手を欠いた日本に対し、最初にビッグチャンスを作ったのもバーレーンだった。

前半31分のショワイテル、38分のマロド。幸いなことに、酒井 宏樹、比嘉祐介の甘いマークを外したショワイテルのシュートはキックミス。そしてマロドの30メートルのロングシュートは左ポストをかすめ、日本は結果的に事なきを得た。

このいずれかでも決まっていたら、前半にシュートらしいシュートをまったく打てなかった日本は、精神的 にもかなり追いつめられたことだろう。

▽アウェーに苦手意識?

なぜなら今回のU22日本代表はアウェーでの戦いに苦手意識を持っているように思われる。

今年になっての外国勢との対戦は6勝3敗だが、敵地に限れば2勝3敗と負け越し。この事実は、少なくとも選手たちの脳裏に負の遺産として残っていたはずだからだ。

▽流れ変えたセットプレー

勝負の流れを変えたポイント。それはこう着した試合のなかでままあるセットプレーだった。

前半ロスタイムの日本の右CK。扇原貴宏のキックをルトファラが目測を誤ってのクリアミス。そのこぼれ球に今回 のチームで唯一の海外組、ボルシアMG(ドイツ)の大津祐樹が抜群の反応を見せ右足アウトサイドで流し込み、貴重な先制点を奪った。

▽見た目より難しいシュート

前半の終了間際という最高の時間帯に、相手GKのミスにも助けられて挙げた1点。大津のシュートは見た目ほど簡単なものではなかった。

扇原のキックの弾道に合わせてファーサイドに走り込んだものの、GKが触ったことでタイミングが微妙に狂った。

それを瞬時に修正しゴールにボールを送り込むための右足アウトサイドの角度を調整した大津。左足で打っても、ワントラップしてもおそらくゴールは難しかったのではないかという中での判断力は、素晴らしかった。

さらにこのチームで最多のゴールを挙げている永井謙佑を外し、大津を先発させた関塚隆監督の直感も、この日は冴えていたということだろう。

▽手放しで喜べない勝利

先制したことで「敗戦」の二文字はかなり遠のいた。そして67分、試合を終わらせる追加点が生まれた。

左サイドの扇原のクロスのこぼれ球を山田直樹がボレーシュート。一度はGKに防がれたが、そのリバウンドを東慶悟がフォローして2-0。これで勝負は決した。

結果だけを見れば2点を奪い、守備は無失点。これ以上ない成果を苦手のアウェーで収めた。しかし、そう手放しで喜べる内容だったのだろうか。決してそうとはいえない。

▽存在感あるタレントの不在

試合後、関塚監督は「最低限の勝ち 点3を収めたが自分たちのサッカーはできなかった」と語っていた。確かにこのチームは昨年の中国でのアジア大会を制

したチームがベースにはなっていたが、アジアカップを制した彼らの兄貴分に当たるフル代表ほどの安定感はない。

試合の主導権を握る力に欠けるのだ。所属チームで若手として扱われているからかもしれないが、前回の北京五輪の本田圭佑のような「俺が!」という存在感のあるタレントがいないのだ。

▽このままでは五輪本番も…

11月27日に東京・国立競技場で行われるシリア戦に勝利を収めれば、ロンドンへの道はかなり近づくだろう。だが、このままでロンドンに行っても戦うのは難しいだろう。

個人個人が、黙っていても自己主張を感じさせるチームでなければ、世界の上位に立つのは難しい。幸いなことにこのメンバーは現在伸び盛り。本大会までの約8カ月の時間は、 彼らを変える可能性がある。

▽オバQ不在のスタジアム

それにしても不思議な光景だった。画面を通して見るマナマのナショナルスタジアムのスタンドには人がいなかった。

バーレーンも関係しているジャスミン革命の影響で、人が大勢集まることが禁じられているのか。かつて行ったマナマのスタジアムのスタンドは、オバQのような白い民族衣装のアラブ人で埋め尽くされていた。

そのオバQたちのいないアウェーも、日本には大きく味方したのかもしれない。だからこそこの幸運を、次につなげたい。

岩崎 龍一[いわさき・りゅういち]のプロフィル

サッカージャーナリスト。1960年青森県八戸市生まれ。明治大学卒。サッカー専門誌記者を経てフリーに。新聞、雑誌等で原稿を執筆。5大会連続でワールドカップの取材を行っている。