サッカーの日本代表が、2014年ワールドカップ(W杯)ブラジル大会へ突き進んでいる。3次予選の前半3試合を終え、2勝1分けでC組首位。ただ、順調な足取りの中であらためて感じるのが、格下相手から確実に勝利を収めることの難しさだ。

1―0で辛勝した3次予選初戦の北朝鮮戦(9月2日)が好例だ。相手はJ1川崎でもプレーしたFW鄭大世(ボーフム)1人を前線に残すだけの、いわゆる「ドン引き」状態。必死に守る相手に対し、日本はボール支配率約65%、シュート数20対5と圧倒しながら、ゴールは後半ロスタイムに吉田麻也(VVVフェンロ)が奪った1点にとどまった。

「きれいなサッカーをしようとし過ぎると足をすくわれる。もう少し強引に、がむしゃらに点を取りにいく姿勢が必要だと思う」。試合後、主将の長谷部誠(ウォルフスブルク)が漏らした言葉が、苦戦に陥った理由を端的に言い表しているような気がした。

天皇杯全日本選手権でも、同じような試合に遭遇した。10月8日の川崎―アルテ高崎。J1川崎が日本フットボールリーグ(JFL)のアルテ高崎を一方的に押し込みながら、前半は0―0。後半16分、ようやく川崎が先制したが、アルテ高崎も8分後に少ない好機を生かして同点に追い付いた。

結局、延長戦の末に川崎が田坂祐介のゴールで何とか勝ったが、試合後の田坂のコメントが興味深かった。「格下相手の難しさって何」と水を向けると、「きれいにやろうとし過ぎた。泥臭さが足りなかった」。北朝鮮戦後の長谷部の言葉と酷似していた。

スポーツは、心理的要素が占める部分が大きいものだと思う。相手の力が上であれば、負けても失うものはないから、真っ向からぶつかっていける。逆に勝って当たり前の相手を敵に回すと、どうしても慎重に戦わざるを得ない。北朝鮮の鄭大世が「(日本に)ひと泡吹かせたい」と試合に臨み、アルテ高崎の主将の増田清一が「格上とやると、いつも以上の力を出せる」と話したように、「弱者」の方が気持ちの面では優位に立てるのかもしれない。

3次予選第2戦(9月6日)でウズベキスタンと1―1に終わった日本は、第3戦のタジキスタンとの試合(10月11日)で大量8ゴールを重ねた。もちろん、失格したシリアに代わって3次予選に出場したタジキスタンの実力が乏しかったこともあるが、この試合は日本の選手がある種の危機感を持って臨んでいた。

岡崎慎司(シュツットガルト)が「いい結果を出して周囲を黙らせることも大事」と話したように、北朝鮮戦、ウズベキスタン戦、強化試合のベトナム戦(10月7日)の3試合で計3点に終わった「得点力不足」の不安を払拭しようという強い思いがあった。

3次、最終予選と続くW杯への道のりで、1月のアジア・カップを制した「アジア王者」の日本に対しては、どのチームも必死で挑んでくるだろう。技術や戦術面だけでなく、精神力でも相手を圧倒する。W杯で上位進出を目指す日本に求められるのは、そんな試合運びではないだろうか。

山本 地平(やまもと・じへい)1973年生まれ。横浜市出身。2008年3月、他社の運動部記者から共同通信社に転身。大阪支社で遊軍をした後、09年5月から東京運動部でサッカーを担当