「ありがとう」「残念」「とてもさびしい」「実感がわかない」…。

9月18日に、自動車のインディカー・シリーズ、第15戦インディジャパンの決勝を行った栃木県茂木町の「ツインリンクもてぎ」。最後となる日本開催を見るために約5万5千人のファンが詰めかけたサーキットは、今年限りでの開催中止を惜しむ声で包まれた。

14回を数えたレースの中止が決まったのは、今年2月。不況に加え、1998年にインディカー・シリーズの前身にあたるカート・シリーズのレースを初開催して以来、赤字が続いていたことも原因とされる。

「最初はベビーカーを押してきていた。家族の思い出が詰まっているだけに、とてもさびしい」と話す横浜市の会社員、大栗伸一さんは12年連続での観戦になる。一緒にいた息子の拓実くんと直人くんはもう中学生。インディカー以外の四輪レースを見に、サーキットを訪れるモータースポーツ好きに成長した。

元F1ドライバーの佐藤琢磨が昨季フル参戦したことをきっかけに、ファンになったという人も多い。千葉市の主婦はドライバーとの近さが同シリーズの魅力と語る。「鈴鹿サーキットと富士スピードウェイでF1を見たが、ここほどは近づけなかった。残念ですね」と声を落とした。

レースは、スコット・ディクソン(ニュージーランド)が2009年以来となる優勝。佐藤は10位、同シリーズ日本人最高の2位の実績を持ち、今回はスポット参戦した武藤英紀は18位と、日本勢はともに残念な結果に終わったが、スタンドから温かい拍手が送られた。レース終了後の会見で、佐藤は「もう走れないことが実感としてわかない」と残念がった後、「これでおしまいと思いたくない。だから、今回はさよならではなく、お疲れさまと言いたい」と再開を熱望した。

2人の息子を見ながら、大栗さんは「14年ですか。短いようで長いですね」とぽつり。今年で連続25回目を迎えるF1の日本グランプリなどに比べると、インディジャパンの歴史は短い。しかし、人々の心に刻まれた思い出の数は決して負けてはいないことだけは確かだ。

それだけに何とか続けられなかったか。収支は大切だろう。だが、それだけでは計れないものを考慮に入れて、中止の是非を判断することも必要なはずだ。(榎並秀嗣)