夏休み中が明けると、来春の進路について思いをめぐらす選手も多いだろう。

夏の間の大会結果によって、学校卒業後も競技を続けるか否かで迷っている人もいるかもしれない。最近は就職率が低いため、スポーツを続けた先の、将来への不安を抱く選手も多い。そんな現役選手の不安や悩みに答えようと、全日本柔道連盟ではこの夏、選手引退後の人生=セカンドキャリアについて紹介する「女子柔道選手 セカンドキャリアハンドブック」を作成した。ハンドブックは2000部作成され、中学生以上の女子選手に無料で配布されるのだが、なぜ女子限定なのか。企画・編集を担当した山口香さん(筑波大大学院准教授)はこう話す。

「女子の場合、選手引退後も柔道に携われる環境が男子に比べて整っておらず、引退後、柔道から離れてしまう人が多い。そこで女子を対象に元選手たちが引退後、どのような職業に就き、どんな人生を送っているのかを紹介し、将来の参考にしてもらおうということになりました」

登場するのは元選手45人。主に女子柔道が五輪正式種目となった1992年バルセロナ五輪から2008年北京五輪まで、全日本柔道連盟の強化指定を受けていた人たちだ。大学や高校教員、警察官といった柔道経験者が比較的多い職種を始め、漁師、料理人、アロマセラピスト、会社経営者、そして主婦など多種多様な立場の人々が、引退を決断したときのこと、現在の職業や立場を選んだ理由について語っている。

共通するのは、選手時代とは違う充実感を求めて、悩みながらもセカンドキャリアを切り拓いていくたくましさ。「厳しい練習を乗り越えてきた自信があるから、たいていの困難は乗り越えられる」「子育ては大変と聞かされていたが、プレッシャーで毎晩目が覚めていたことを考えると、赤ちゃんの夜泣きなんて幸せにすら思える」「目標達成のために信念を貫くことは柔道も仕事も同じ」などなど、現在進行形の経験談がリアルに語られていて、選手でなくとも(つまり本稿筆者も)役に立つ、半生記集のような1冊となっている。

山口さんは言う。「今回、登場してくれた元選手の仲間たちは、『私でよければ、ぜひ』と快く協力を申し出てくれました。一方で引退後も柔道に関わるための環境整備について要望も届いています。このような声を吸い上げ、女性の引退後の受け皿を整備していきたい」

全日本柔道連盟では、今回のハンドブック製作を担当した女性プロジェクト部会を指導者養成特別部会内に設置。こうした事業を通じて女性指導者の育成につなげたい考えだ。(スポーツライター・佐藤温夏)