アントニオ猪木率いるIGFが8月27日に両国国技館で東日本大震災復興支援大会を開催する。ピーター・アーツや長島☆自演乙☆雄一郎らK-1からの転向組に加え、藤波辰巳やミル・マスカラス、アブドーラ・ザ・ブッチャー、タイガー・ジェット・シンらの昭和世代のスターの参戦が決まった。

同日は日本武道館で新日本、全日本、ノアなども大震災復興支援の合同興行を行う。同日にやらなくても、と思うが、いろんな経緯があり、遺恨や意地もあって興行戦争となった。まあ、新日本と全日本が激しくやりあっていた1980年代には、よくあったこと。興行戦争を機にプロレス界が熱くなれば、それもいいだろう。

ここに来て、猪木の1日だけの“現役復帰"の可能性が出てきた。ブッチャーとシンが猪木の襲撃を予告したことで、挑発された猪木がリングに上がり、2人とやりあうだろう、という展開が予想されている。

正式な試合ではないのだから現役復帰とはならないだろうが、これだけはやめてほしい。大仁田厚、長州力、テリー・ファクら盛大な引退試合をやってもらいながらリングに戻ってきた選手は多いが、スーパースターなればこそ、こうした厚顔無恥の行動はしてほしくない。

確かにプロ野球でも、OB戦で往年の名選手がユニホームを着て投げて打つことはある。芸能界では、引退→復帰したスターは少なくない。しかし、強さを売り物にしたプロレス界のカリスマだったからこそ、たるんだ体やスローモーなファイトの姿は見せてほしくないのである。

引退後の2000年にはタッキー(滝沢秀明)とリングの上でエキシビションマッチをやった。そんな「お遊び」なら、まだ許せた。しかし、老いた猪木が、同じく老いたブッチャーやシンと闘う姿なんて…。

猪木にあこがれ、猪木の生き様を心の支えにしていた人間は数知れない。そんな人たちは今も猪木への憧憬を心の片隅に残している。その憧憬を壊すことはやめてほしい。それが夢を与えてくれたカリスマの最後の義務だと思う。(格闘技ライター・樋口郁夫)