2011年のモトGP前半戦を締めくくる第10戦は、欧州大陸から大西洋を跨いでアメリカ合衆国へ舞台を移す。サンフランシスコ郊外モントレーの内陸側に位置するラグナセカレースウェイで行われるこのアメリカGPは、1988年から1994年まで行われた後に一時中断し、2005年から復活した。再開されてから今年で7年目になるが、7月下旬のイベントとしてすっかり定着した感がある。

カレンダー復活後のアメリカGPは、AMA(全米選手権)が併催される関係上、モトGPクラスのレースのみが行われている。欧州と異なるアメリカ独自の風土に加え、このようなスケジュール面の事情ともあいまって、ラグナセカレースウェイのレースは他のどのグランプリとも違った独特の雰囲気がある。

レースウィーク中は、メインイベントのモトGP以外にも、分刻みの細かいスケジュールでAMAの各カテゴリーが練習走行やレースを行うため、サーキットは早朝から夕刻6時頃まで何かしらの排気音が轟いている。コース上を走行するバイクの姿を眺める観客たちがいる一方、敷地内のあちらこちらに設営された物販テントのエリアも多くの人々で大盛況だ。販売されているものはオートバイ関連のパーツや装具から、Tシャツや手作りの記念グッズまで、じつに様々だ。また、ホンダ、ヤマハ、スズキ、ドゥカティのアメリカ現地法人が特設ブースを作って自社の量産バイクを多数展示し、AMAやモトGP選手のサイン会やトークショーを実施する。

カリフォルニアの突き抜けるような青空の下、大勢の観客たちが熱に浮かされたようにひしめくこの会場に身を置いていると、何か懐かしい既視感のようなものをおぼえる。バイクブームが頂点に達した1980年代後半から1990年代前半、15万人以上の観戦客を動員していた頃の鈴鹿8耐が、まさにこんな雰囲気だった。今のラグナセカレースウェイには、華やかなりし頃の鈴鹿8耐に似た猥雑さと高級感がないまぜの、独特の高揚感があるのだ。おそらく、世界最高峰のモトGPがもたらすプレミアム感と、AMAのどこか垢抜けない手作り感がほどよいバランスで混ざり合い、あの頃の鈴鹿サーキットの盛り上がりに似た、独特の雰囲気と効果をもたらすのだろう。

午後2時から始まったモトGPクラスの決勝レースでは、ホルヘ・ロレンソ(ヤマハ・ファクトリー)、ケーシー・ストーナー(レプソル・ホンダ)、ダニ・ペドロサ(同)の3台がトップ争いを繰り広げ、最後は気迫で勝るストーナーが残り6周で抜け出して今季5勝目。ポイントランキングでも2番手のロレンソとの差を20点に広げ、モトGPは2週間の短い夏休みに入った。そして日本では、週末に34回目の鈴鹿8時間耐久ロードレースが行われる。(モータージャーナリスト・西村章)