世界ボクシング協会(WBA)スーパーバンタム級チャンピオン、下田昭文(帝拳)が9日、米ニュージャージー州アトランティックシティーで同級1位リコ・ラモス(米国)を相手に初防衛戦を行う。日本人の世界王者が米本土で防衛戦を行うのは初めてで、さらにラモスはデビュー以来19連勝(10KO)を続ける不敗のホープ。敵地という悪条件も重なる。この「大冒険」をどうクリアするのか。

今年1月、判定勝ちで王座を獲得した下田が、いきなりの試練を迎えた。しかし、下田はすべて前向きにとらえている。「勝つのは大変だとは思うけど、ビッグチャンスには間違いない。テレビ放送もあるし、光栄にも思う」。確かに白星を挙げれば下田の評価はグーンと上がる。会場は元世界ヘビー級王者マイク・タイソン(米国)が闘った場所でもあり、HBOで放映される。防衛成功の次には、トップボクサーとの夢カード実現も現実味を帯びてくる。大げさではなく「一世一代の大勝負」だ。

下田はサウスポーからの軽快なアウトボクシングを得意とする。ジャブに続く左右連打にはスピードもあり、切れ味も十分。自分のペースをつかむと想像以上の実力を発揮する。半面、試合のムラがあり、不調のときは別人のように冴えないときがある。本場のリングでどちらの顔を見せてくれるのだろうか。戦績は23勝(10KO)2敗1分け。

一方、挑戦者のラモスは右のボクサータイプ。アマチュアで97勝17敗の豊富な実績を誇り、全米五輪代表候補だった。潜在能力は高く、中間距離から放つ左フックにはKOの威力を秘めている。アマで鍛えたテクニックに定評はあるが、逆に試合がもつれると自分の持ち味を出せないことも。初の世界戦という舞台。平常心で闘えるかどうか、が大きなポイントになりそうだ。

ボクシングライターの宮崎正博氏が「下田にもチャンス十分」と語るように、快挙達成の雰囲気があるのも確かだ。試合は序盤から激しいペース争いになることは必至。下田が右ジャブ、フットワークを忘れず、ヒットアンドアウエーを守れば勝機が訪れるだろう。そして、ラモスの焦りを誘えるか。「将来は3階級制覇を」と豪語する挑戦者もジャブが生命線だ。

下田と同じ帝拳ジムの西岡利晃が2年前、メキシコで防衛に成功(3回TKO勝ち)したのは記憶に新しいところ。果たして、新たな歴史を刻めるか。(津江章二)