つい先日行われた大リーグのオールスター戦。イチローが出ていないなあ、と思いながらテレビを見ていて、びっくりした。

出てくる選手の多くがヒゲを生やしたり、長髪だったり。ジャイアンツのクローザー、ウィルソンなどはキリストの生まれ変わりかと苦笑いしたくなるようなヒゲだった。似合ってない、と思う半面、これが彼らの「自己主張なんだ」と妙に納得したものだ。

▽日本は「角を矯めて牛を殺す」?

長年取材した日本のプロ野球でも強烈に自己主張する選手がいて、この個性豊かな連中がプロ野球を形作ってきたのだと思っている。ただ、容姿に関しては巨人のようにヒゲや長髪などを禁じている場合もあり、監督の考えで規制している球団もある。

その方針に選手が納得して契約しているのだろうから、とやかく言うつもりはないが、「角を矯めて牛を殺す」結果にならないようにと思うだけだ。

才能ある選手の欠点を直そうとするばかりに長所までを殺しては何もならない。「管理野球全盛」の日本プロ野球を見て、つい大リーガーたちと比較してしまう。

▽巨人を悩ます「統一球」

管理野球を伝統とする巨人が苦戦している。15日現在で、首位ヤクルトに12ゲーム差をつけられての5位。原因ははっきりしている。チーム防御率2・76と本塁打数48はリーグトップだが、打率2割2分9厘と得点194はワースト。

投手陣は頑張っているが、本塁打でしか得点できない構図である。打撃陣が飛ばなくなったといわれる「統一球」に対応できていないといえそうだ。

▽救世主生み出せない「没個性」

昨年、12球団で断トツの226本塁打した“成功体験"はそう簡単に忘れられないだろうし、真芯で、しかも強く引っ張らないと遠くへ飛ばないと追い込まれている選手もいる。小笠原道大はその代表例だろう。

新外国人選手や国内トレードでの補強、打線の組み替え、投手陣での配置換えなど手を尽くしているが、劇的な効果は出ていない。原辰徳監督は「ここぞの真の男が出てこない」と嘆いているが、はからずも管理野球の弱点、ピンチに弱い「巨人の没個性」を見る思いである。

▽サブローは大村、イチローなら?

6月にロッテから巨人に移籍した「サブロー」の登録名は「大村」だが、球場でのアナウンスは「大村三郎」という、ファンに定着している「サブロー」を入れる折衷案だった。

万が一、イチローが巨人に移籍したらどうなるだろう。本名の「鈴木一朗」になるのだろうか、それとも世界のブランド「イチロー」か。常識にとらわれずマイペースを貫く、この異端児が巨人を“負かしそうな"気がするのだが。あくまで仮定の話です、これは。

▽「紳士たれ」は賛否半ばだが…

4年前、巨人に移籍した小笠原は日本ハム時代にトレードマークとなっていたあごヒゲをきれいさっぱりそり落として、周囲を驚かせた。巨人に移籍する選手は球団訓の「巨人軍は常に紳士たれ」に沿って行動してきた。

こうした巨人の方針にファンの賛否は半ばしそうだし、選手はプレーしていくらであって、容姿や名前は二の次と割り切っていよう。ただただ、没個性につながらないことを願う。

巨人は昔から大物選手を補強してきた。金田正一に張本勲、落合博満、清原和博らの面々である。大物=個性的であり、彼らと球団・監督との水面下での葛藤は想像しただけで面白い。ただ、残念ながら、今の巨人からそんなパワーは感じられない。

田坂貢二[たさか・こうじ]のプロフィル

1945年広島県生まれ。共同通信社では東京、大阪を中心に長年プロ野球を取材。編集委員、広島支局長を務める。現在は大学野球を取材。ノンフィクション「球界地図を変えた男 根本陸夫」(共著)等を執筆。