モトGP第6戦イギリスGPの決勝レースが行われた6月12日、会場のシルバーストーンサーキット周辺は朝から冷たい雨が降り続く真冬のような一日になった。最高峰モトGPクラスの決勝レースが始まった午後1時の気温は11度、路面温度は10度。コースは平坦で水はけが悪いことに加え、路面の凹凸に水が溜まって劣悪なコンディションだった。その状況を完璧にコントロールしたC・ストーナー(レプソル・ホンダ/オーストラリア)が、今回も得意の独走劇を見せた。第4戦フランスGPからの3連勝で今季4度目の優勝を飾ったことにより、年間ランキングでもトップに躍り出た。このストーナーの活躍により、2006年以来総合優勝から遠ざかっていたホンダが、5年ぶりの王座奪還に向け確実に地歩固めを続けている格好だ。

2006年にホンダサテライトチームの所属で最高峰のモトGPへステップアップしてきたストーナーは、一発の速さは見せるものの、結果を残せず転倒するレースも多かった。翌07年はドゥカティワークスチームに抜擢され、18戦中10勝を挙げて、21歳の若さで年間総合優勝を達成した。10年までドゥカティのエースとして活躍した後、今年からホンダへ復帰。念願のワークスチーム、レプソル・ホンダの一角を占める選手として、ホンダ陣営全体を牽引する存在となった。

この間、2009年には謎の体調不良に悩まされ、シーズン終盤数戦を欠場し、チャンピオン争いから脱落するという憂き目にもあった。翌2010年には、この体調不良は乳製品を体が受け付けない乳糖不耐症が原因であると判明する。現在では、食生活の面で最新の注意を払い、症状が発生しないように万全の対応をとっているという。

ストーナーのライディング面での特徴は、レース序盤でいきなり速いラップタイムを刻み、後続選手を一気に突き放してしまう走り方にある。いきなり速いラップタイムに到達できるのは、タイヤがグリップ力を最も良く発揮する温度域へ表面温度を上昇させてやることがずばぬけて上手いからだ。そして、その後も高水準のタイムを安定して記録し続け、あっという間に独走態勢を築きあげてしまう。ドゥカティ時代もホンダ時代も、このスタイルは一貫して変わらない。この走りと対照的なスタイルを持つのが、現チャンピオンのホルヘ・ロレンソ(ヤマハ・ファクトリー/スペイン)だ。ロレンソは、タイヤの摩耗をうまくコントロールする能力に長けているため、レース終盤になっても高い水準のラップタイムを刻み続け、序盤の差を回復して着々と追い上げて行くレース展開が多い。

タイヤの特性を引き出すそれぞれの能力の違いがこのようなスタイルの違いを生むわけだが、今年はロレンソがマシンセッティングなどで苦戦しているために、両選手が正面から真っ向勝負をするレース展開はまだ見られない。

年間ランキングは、現在、第5戦までポイントをリードしていたロレンソが2番手に陥落し、ストーナーが逆転首位に立った。今後はストーナーがライディングスタイル同様に一気に差を広げてゆくのか。あるいは、マシン面の活路を見いだした際にロレンソとヤマハ陣営がしたたかに追いつめるのか。シーズンは、まだ前半1/3を終えたばかりである。(モータージャーナリスト・西村章)