2004年アテネ五輪の柔道90キロ級銀メダリスト泉浩が、レスリングで来年のロンドン五輪金メダルを狙いにいく。7月初めの全日本社会人選手権に出場するが、結果がどうなるかは別にして、消えることのない金メダルへの思いを感じる。

09年9月には総合格闘技でプロ格闘家としてさいたまスーパーアリーナでデビューした。その試合はニュージーランドの選手にKO負けを喫したが、2戦目で初勝利を挙げ、昨年暮れの試合まで4連勝している。プロとしてこれからという時の再度の五輪への挑戦である。レスリングはプロとアマの壁がないから総合格闘家としての闘いも続けていくようだ。

7年前のアテネは、決勝でグルジアの選手にすくい投げで一本負けした。その時に柔道競技を取材させていただいた私は、泉の五輪での試合と同じぐらい印象に残っていることがある。柔道の国際大会では、だいたい準決勝進出者までが決まると、準決勝以降は遅い時間帯の試合となることが多い。空いている数時間はお客さんも一度会場からいなくなる。私は、誰もいない館内を歩いていると、通路の脇のいすに腰掛けた泉がアドバイスを受けているのを目撃した。心構えを説いていたのは柔道私塾「講道学舎」、世田谷学園高校で指導を受けた持田治也さんだった。今でも泉浩というと、あの師匠と弟子が向かい合っていた光景が浮かんでくる。

あの時、金メダルを手にしていたら今回のレスリング挑戦はなかったのだろう。当時は22歳の明大の学生だったが、今ではすごみのある顔つきになり、29歳の年齢よりも上に見える。二足のわらじでどこまで頑張れるか。日本選手初めてとなる、違う競技での五輪メダリストの期待をかけてみたい。(榎本一生)