来年のロンドン五輪出場を目指すレスリング選手からドーピング違反者が出た。グレコローマン96キロ級の北村克哉選手(ドン・キホーテ)で、4月末の全日本選抜選手権におけるドーピング検査で陽性を示した。インターネットで購入した海外のサプリメントの中に違反薬物が含まれていたもよう。

日本アンチドーピング機構の「意図的ではないと推測される」という見解を信じたい一方、アスリートは自動販売機で売っている栄養ドリンクを飲むにしても注意しなければならないのに、あまりにも注意が足りなかったと言わざるを得ない。

北村選手は、いずれはプロレスかプロ格闘技に進むことが予想され、プロの出入りするジムでも頻繁に筋力トレーニングをやっていた。厳密なドーピング規制のないプロの選手の間で、ドーピングへの感覚がまひしていたとも考えられる。だからといって、責任は免れず、2年間の出場停止という厳しい処分を受けることになる。

以前、専門誌の記者から「プロは興行だから、薬物使用は問題ないのでは」という言葉を聞いたことがある。実際に闘っている選手の薬物使用への意識はこんなものかもしれない。確かに「プロはいかに金を稼ぐかの世界」と考えるなら、その考えも一理あるかもしれない。その場合、たとえ真剣勝負であっても、世間一般からはスポーツとは認められないだろうが、それでもいいというのなら…。

しかしドーピング検査の目的は、公正さもさることながら、選手の健康を考えてのことであることを忘れてはならない。健康を害し、命を縮めることを野放しにする世界が、社会に受け入れられるだろうか。それが健全な集団のやることだろうか。

プロがスポーツであれ興行であれ、薬物は厳しく規制しなければならない。筆者は、プロ格闘技が真に強さを競う世界になってほしいという気持ちから、プロも国際アンチドーピング機構に準じた厳正な検査をやってほしいと思っている。(格闘技ライター・樋口郁夫)