今シーズン、J1に復帰したばかりの柏レイソルの快進撃が止まらない。第11節でも、前節まで2勝3分けと安定した戦いぶりを見せていたアルビレックス新潟にアウエーで3-0の快勝。5勝1敗で首位を守った。

▽実にいい得失点のバランス

得点と失点を見ても、13得点4失点と実にバランスがいい。6試合のうち3試合が無失点での勝利。リードした試合を、慌てることなく締め括るあたりは、まさに強いチームの勝ち方だ。昨年、J2を戦っていたチームが、ここまでやるとは大多数の人が予想していなかったのではないだろうか。

監督は、ブラジル人にしてはかなり生真面目なネルシーニョ。ちょっと怖いかなとさえ思わせる。その指揮官が、シーズン前に掲げた目標が「2度と降格に怯えないチームにする」ということだ。というのも、柏はこれまで度もJ2陥落の悲哀を味わっているのだ。

▽想像以上に厳しいJ2

JFL(日本フットボールリーグ)から昇格したチームならまだしも、J1から降格したチームがJ2を戦うのは想像以上に難しいらしい。クラブ経営の面でもマイナス面は測り知れないが、まず選手たちの意識を切り替えさせるのが大変だという。

メディアの露出度も高いトップリーグでプレーしていた選手たちが、ある日を境にスポットライトを外される。プロ、特にJ1でプレーする選手のほとんどは、良い意味でも悪い意味でも自意識が高い。そんな彼らのモチベーションを、指導者がどの方向に導けるかで、その後のチームのあり方が変わってくる。

▽J2を有効活用

降格したチームの目標は、J1昇格が最大のものになるのは間違いない。同時に、いかに自分たちの戦術的スタイルを確立していくか。その意識があるのとないのとでは、J1に再び復帰したときのチームの地力に確実に差が表れてくる。J2を有効に活用することがポイントとなってくる。

1年間の濃密な練習試合の連続。J2をこのようにポジティブにとらえたかはわからない。しかし、ここ3シーズンを見ると、J1に再昇格したチームがJ2でチーム力をアップさせ、いきなり旋風を巻き起こしているのも事実だ。2008年にJ2を制したサンフレッチェ広島は、09年のJ1で4位の成績を収め、10年のACL(アジア・チャンピオンズリーグ)に出場した。

09年にJ2で2位になったセレッソ大阪は、10年のJ1で3位の成績を収め、同じくACLの出場権を手にし、現在、アジア王者の座を懸けて戦っている。

▽立ち返る原点

柏も含めて、この3チームに共通していえることは、それぞれに確固たるサッカーのスタイルが見えることだ。広島とC大阪の持ち味は攻撃。柏は手堅さ。見る者に対しても伝わるということは、逆にプレーする選手たちが苦境に陥ったときに、立ち返る原点を持っている強味にもつながる。

昨年、柏は2位のヴァンフォーレ甲府に勝ち点10差をつける独走でJ2を制した。しかし、ネルシーニョ監督が「楽な試合は一つもなかった」と語ったように、タレントの顔ぶれがそろっているからといって簡単に勝てるものではないのもJ2だ。

その厳しい状況のなかでJ1昇格の結果と、チームの戦術的な修練度を高めるという2つの目標を同時に達成する。それを成し遂げているのが、広島のペトロビッチ、C大阪のクルピ、そしてネルシーニョと、すべて外国人監督なのは偶然だろうか。もしかして外国人監督のほうが、自分のサッカー哲学に対して忠実なのかもしれない。

大熊監督の下、豊富なタレントを擁しながらも、数試合でJ2に同化し、苦境に喘ぐFC東京の現在を見ていると、なぜかそう思えてくる。

岩崎 龍一[いわさき・りゅういち]のプロフィル

サッカージャーナリスト。1960年青森県八戸市生まれ。明治大学卒。

サッカー専門誌記者を経てフリーに。新聞、雑誌等で原稿を執筆。

5大会連続でワールドカップの取材を行っている。