10日まで行われた「ゴルフの祭典」マスターズ・トーナメントの前に、米メディアで話題になった選手がいた。3月中旬の米ツアー、トランジションズ選手権でツアー初優勝を飾った26歳の米国人ゲーリー・ウッドランド。大学の途中までバスケットボールをやっていたという経歴が注目されていた。

トップ選手ではなかったとはいえ、米国の花形スポーツで大学の奨学金を受けるレベルにあった。185センチとバスケットの世界では上背がないこともあり、大学の途中からゴルフに専念。パワーが魅力で、トランジションズ選手権では石川遼と2日間同組で、ほとんどのホールで石川の先にいた。その翌週、ウッドランドと回ったタイガー・ウッズ(米国)は「落ちてくると思っても、まだ飛んでいる。見たことがないショット。違う競技のようだ」と評した。

動きに俊敏さや激しさを求められないゴルファーに「アスリート」の印象は薄い。鍛えた体で優勝を重ねてきたウッズは、そんなイメージを変える存在だった。そのウッズが「ダンクシュートを決められる人間がゴルフをやっている。競技が変わりつつある」と言う。

体格の不利や非力さを技術で補えるのが、この競技の魅力の一つではある。しかし、トップレベルでは体の強さがなくては戦い続けられない。石川のトレーニングを指導する仲田健トレーナーは「ゴルフは完全に(瞬発系の)無酸素運動」と強調する。1ラウンドに4~5時間がかかっても、一つ一つのショットは瞬間的にパワーを爆発させる動作。これをいかに安定して繰り返すかが勝負だ。石川はずっと、そのためのトレーニングを続けている。

試合のためだけではない。マスターズまで約2カ月の米国遠征中、石川は5時間もボールを打つ日がしばしばあったという。「前は長くて3時間ぐらいだった」と仲田トレーナー。練習の質と量を両立するにも、体力がいる。

以前、マスターズで予選落ちして「気持ちが弱い」と語った石川。初めて予選を通過した今年はこう言った。「気持ちの強さとは、つまり練習量。たくさん練習して、その成果を試合で出すことで自信、気持ちの強さになる。前はそういうことに気付いてなかった」

ちょっとしたことでスコアはすぐに崩れる。体を鍛えても、その効果を実感しにくいのがゴルフだ。けれど、長期的には絶対に無意味ではない。マスターズで4日間、力を出し尽くした石川が、直後の国内ツアー開幕戦で優勝を争った。疲労と時差ぼけを、一回りたくましくなった体ではね返したあたりに、トレーニングの成果が見てとれる。

山田亮平(やまだ・りょうへい)1998年共同通信入社。大阪、名古屋支社で近鉄や中日などプロ野球を中心に取材。2005年から柔道、サッカーなどを担当し2007年からゴルフ、08年からスケートも担当。1974年生まれ。