ハルク・プロは、全日本ロードレース選手権に参戦する多くのチームの中でも、歴史と実績を誇る名門チームだ。1986年にエントリーを開始し、89年からフル参戦。全日本選手権の全クラスでチャンピオンを獲得し、昨年は鈴鹿8耐でもついに悲願の優勝を達成した。過去には青山博一・周平兄弟がハルク・プロから世界へ羽ばたき、彼らの後を追う形で世界グランプリを戦った中上貴晶も現在はハルク・プロに復帰してST600クラスに参戦している。ここ数年は、二輪車のトランスミッションギアで世界に大きなシェアを持つ武蔵精密工業をメーンスポンサーに迎え、「MuSASHi RT ハルク・プロ」というチーム名でレース活動を行っている。

今年の全日本選手権は、東日本大震災の影響により4月3日に予定されていた筑波サーキットの開幕戦が中止。四輪レースのフォーミュラニッポンと全日本ロードレースの最高峰JSBを共催する鈴鹿2&4レースも、当初は4月17日の予定だったが1カ月後の5月15日へと延期になった。結局、JSB以外の全クラスが開幕を迎えるのは、7月3日にツインリンクもてぎで行われる大会からになるのではないか、とハルク・プロのオーナー、本田重樹は話す。

今回の地震で被害を受けた各地は復興に向けて少しずつ動き始めたとはいえ、様々な物資の不足は深刻だ。その一方で、モータースポーツはそれらの物資を消費することで競技が成立するという側面もある。それだけに本田の心中は複雑だ。

「モータースポーツは、被災された方々が必要としている工具やガソリン等の物資を使用、消費する競技じゃないですか。だから、難しい判断だとは思います。ただ、我々も震災発生以来、有形無形の支援を行ってきたし、それは今後も継続していかなければならない。そのためには、自分自身の基盤を安定させる必要がある。だから、我々はなるべく早くレースを含めた通常の生活に戻って、それぞれの日常を確立した上で継続的に支援する態勢を整えたいと考えています」

さらに本田は、自分たちのレース活動を支援の原動力にしていきたい、とも話す。

「非常にデリケートな問題ですが、我々の行動が結果的に復興支援の力にもなるんじゃないかな、とも思います。常人には到底不可能なことをやってのけるのが一流のアスリートやプロスポーツだし、そういうものを見て勇気づけられることって絶対にあると思うんですよ。先日のサッカーの試合もそうだし、プロ野球だって4月になって開幕した。その意味では、自粛ばかりで何もしないのは、けっしていい影響をもたらさない。その世界に携わる我々の生活基盤を固めるためにもやっていかなきゃいけないし、それがひいては復興を目指す方々の力に少しでもなれば、というのが私たちの願いです」(モータージャーナリスト・西村章)