柔道の北京五輪金メダリストから総合格闘技入りした石井慧が、米国で行われる柔道の大会に出場することになった。「柔道ってプロアマ・オープンの競技だったの?」と思って柔道の専門記者に聞いてみたところ、「日本ではできない。でも国際柔道連盟は1991年にプロの参加を認めている」との答え。

そういえば1992年バルセロナ五輪で金メダルを取ったダビッド・ハハレイシビリというグルジアの柔道選手は、日本のリングスでプロ選手として闘う一方、その後も柔道の大会に出ていた。柔道というのは、時代にそぐわないアマチュア規定を遵守している競技という認識だったが、「日本の柔道は」と改めなければならない。

それはさておき、希望をもって総合へ進んだ石井が、なぜ柔道に戻るのだろうか。DREAMは先行きが不透明で、SRCは消滅が確実。五輪金メダリストのプライドとして後楽園ホール級の会場では闘うわけにはいかない。米国UFCでは五輪金メダルの実績など役に立たない…。

いろんな理由があると思うが、五輪V2を捨ててまで進んだ道。この世界でトップに立つという意地を見せてほしかった。総合を引退した吉田秀彦も滝本誠も指導者として柔道へ戻った。総合って、そんなに魅力のない世界なのかな?

うがった見方をするなら、総合の栄光よりオリンピックの栄光の方がはるかに強烈な輝きであることを、彼らは知っているのだ。競技というのは普通、おびただしい数のアマチュアがいて、その中で選びに選び抜かれた人間が五輪に出場し、プロへ行く。プロの人数の数万倍のアマチュア選手がいるのが世界的スポーツ。だからこそ、五輪王者として世界中から崇められる。

今の総合がそうでないことは言うまでもない。金は稼げても、栄光という点ではオリンピックの方が上なのである。

競技を育てるには、アマチュアの充実が不可欠。時間はかかるかもしれないが、今の総合にはアマチュア組織の充実という基本から始めることが必要だと思う。(格闘技ライター・樋口郁夫)