カタールの首都ドーハ郊外にあるロサイルインターナショナルサーキットで行われた2011年のモトGP開幕戦は、ケーシー・ストーナー(レプソル・ホンダ/オーストラリア)が制した。開幕前の冬期テストから絶好調だったホンダワークス勢のなかでも、ストーナーは飛び抜けて高水準な走りを披露してきた。昨季まで所属していたドゥカティでも、セッティングが決まれば群を抜いた速さを見せ、総合優勝を達成した2007年は他を寄せ付けない走りで年間10勝を挙げた。

ストーナーの加入は、レプソル・ホンダの他の2名、ダニ・ペドロサ(スペイン)とアンドレア・ドヴィツィオーゾ(イタリア)にもいい刺激を与えており、彼らホンダ勢は練習走行や予選でも常にトップタイムの常連となっている。HRC副社長中本修平は「ケーシーはホンダに来てくれても速いだろうと思っていたら、まさに期待通り。ケーシーがタイムを出せばダニも負けじと出してくるし、ケーシー、ダニのふたりがタイムをだせばアンドレアもがんばってくれる」と相好を崩す。

ところで、今回の開幕戦は、3月11日に発生した東日本大震災がパドックにも大きな衝撃を与えた。モトGPは日本企業が主役の一角を占めているだけに、欧州のレース関係者にとっても決して他人事ではない。各チームのオートバイやピットボックスには日本を応援するロゴやステッカー、横断幕などが貼付され、モトGPの決勝レース直前にはスターティンググリッドで一分間の黙祷が捧げられた。今回のレースで優勝を飾ったストーナーも、レースウィークが始まる前には「日本で発生したこの大変な状況下で、レースをするのは容易なことではない。僕ら全員が今回の悲劇のことを思っている。僕らにできることは、レースに集中して自分にできる最大限の力を発揮し、ホンダと従業員のためにいいリザルトを残すことなんだ」と語った。木曜の日没後に練習走行が始まると、ストーナーは震災で亡くなった人々への弔意を表す黒い喪章を腕に巻いてピットに現れた。日曜の決勝レースではレース前に語ったとおり、<自分にできる最大限の力を発揮>して<ホンダと従業員のために>最高のリザルトを獲得し、「ガンバレ日本」と記された日の丸を持って表彰台の頂点に立った。

レースを終えたストーナーは「今日のレースはすべてが完璧で全員がバッチリ仕事をしてくれたから、今後のレースが楽しみ」と語った後に「ホンダに心から感謝をするとともに、今まさに大変な状況にある日本の方々へ心からのお見舞いを申しあげます」と締めた。

ストーナーの勝利と衷心からの連帯感は、ホンダ関係者のみならず、今回の震災で被害を受けたあらゆる人々に力強い勇気を与えるにちがいない。(モータージャーナリスト・西村章)