世間での普及と歩調を合わせるように、ロードレース界でもツイッターユーザーは増加の一途を辿っている。モトGPでこのツールを有効に利用している代表的選手が、2010年チャンピオンのホルヘ・ロレンソ(スペインヤマハ)だ。有名人のツィッター利用は、ともすればブログの日記と大差ないような一方的告知に終始しがちだが、ロレンソ(@lorenzo99)の場合はレース活動やプライベートなあれこれをスペイン語と英語で積極的につぶやき、ファンからの問いかけやリプライにも臆することなくどんどん反応する。

ツイッターというツールは、「つぶやく」という言葉に象徴されるとおり、140字以内の短文を自分のフォロワーたちに向けて公開していくサービスだ。だが、ひとりごとのようにただ一方的につぶやくだけではなく、フォロワーたちと交流を重ねることでコミュニケーションの密度は増し、ツィッターを利用する意義や効果は何倍にも増幅する。ロレンソのツイッター上での活動を見ていると、彼はそのよう効能を、理屈ではなく皮膚感覚で理解しているであろう勘の良さ、ある種の<リテラシーへの親和性>のようなものを感じさせる。ロレンソ以外にも、ニッキー・ヘイデン(@NickyHayden69)やベン・スピース(@BenSpies11)などもツイッターユーザーとして有名だ。中小排気量クラスで戦う若手選手にも積極的なユーザーは多い。

日本人選手では、モト2クラスに参戦する高橋裕紀(@yuking72)と、今年はスペイン選手権のモト2クラスで戦う小山知良(@koyamax71)が揃って昨年暮れからツイッターの利用を開始した。また、多くのファンや関係者から参加が待ち望まれていた青山博一(@OfficialHAOYAMA)も2月中旬に利用を開始し、その日のうちに1000人を超える人々からフォローされた。青山や高橋は、有名人の例に漏れず本人になりすましたニセモノが出没して物議をかもしたこともあったが、ホンモノが登場してしまえば問題は一気に解消する。それどころか、ニセモノの存在は新たに登場したホンモノの活動を却ってクローズアップさせる効果も持ってしまうのが、インターネットというメディアの面白いところだ。

ツイッターユーザーはもちろん選手だけに限らない。チームスタッフやメーカー関係者がレース活動の広報ツールとして積極的につぶやくことにより、レース現場と自宅観戦するファンの距離感は確実に縮まる傾向にある。この<ファンと現場の新しいコミュニケーションツール>に対して、既存メディアのジャーナリストたちが「自分たちの仕事が侵蝕されつつある」と嘆くのはあまりに早計で短絡的だ。道具は生かすも殺すも使い方次第。新しいコミュニケーションチャンネルが登場したときに、それを平然とした顔で取り込んでゆくのが、おそらくは本来のジャーナリズムが持っている貪欲な精神だろう。(モータージャーナリスト・西村章)