いよいよ東京での試合が決まった。2009年5月2日以来、1年10カ月ぶりの後楽園ホールのリングである。まさか、こんなに長いこと、このリングで戦うことが出来なくなるとは思ってもいなかった。3月12日、フィリピン選手を相手の防衛戦だ。

後楽園ホールはボクサーあこがれの場所。ボクシングの聖地と呼ばれる場所である。試合を観戦するために何度も通った場所だが、客席から見るリングは近くて遠い存在だった。最も選手の戦う姿を近くに感じながら応援できる場所であり、しかし、そのリングは、戦うために、己を鍛え上げ自分との戦いに勝ってきた限られた人しか立つことのできない場所でもある。

そのリングに立つボクサーは尊敬に値する存在だったし、プロボクサーになる前は、あの場所に立ち入ることさえ恐れ多いと感じていた。しかし、08年2月、JBCが女子ボクシングを公認し、初めてのプロテストで後楽園ホールのリングに立った時、私は興奮していた。

数々の名勝負を繰り広げてきたリングには、うっすらと血痕が見え隠れし、足を包み込むような深みを感じるマット、クラクラするぐらいのまぶしいスポットライトと会場全体を見渡せる高台のリングに緊張しつつも興奮していた。プロテストに合格したら、これからは当然ここで戦うのだと思っていた。

しかし、これまで後楽園ホールのリングに立ったのは3度。最後の試合からは大阪・タイ・メキシコと実際は東京のリングに戻ってくる道のりは簡単ではなかった。だからこそ、こうして再び後楽園ホールのリングに立てることに感謝し、そして誇りに思う。やっぱり、ここは限られた人しか立つことのできないリングなのだとより一層実感した。

これまでも、一戦一戦大切に戦う姿勢を忘れずにきたつもりだが、その思いは以前のものよりもより一層強くなった。負けることが最後ではなく、勝っても、負けても今こうしてここで戦える事が最後となるかもしれないとその価値をより一層感じている。

だから、限られた時間の中でよりよいものを残していきたいと感じる。応援し支えてきてくれた人のためにも、この場所でまた喜びをともにかみしめたい。(ボクシングWBC女子ライトフライ級チャンピオン・富樫直美)