昨年12月、F1シリーズを統括する国際自動車連盟(FIA)が驚きの発表をした。2003年シーズンから実施していた「チームオーダー」を禁じる条項をルールから削除するというのだ。

チームオーダーとは、同じチームのドライバーによる順位操作を指す。02年オーストリア・グランプリ(GP)で、フェラーリのルーベンス・バリケロ(ブラジル)が、同僚のミヒャエル・シューマッハー(ドイツ)に勝利を譲ったのが、禁止されるきっかけとなった。

ゴール前で減速してトップを明け渡すという、あまりにもあからさまな行為には批判が集中した。その結果、チームオーダー禁止をルールに明記したのに、なぜ「改悪」したのだろうか。正直、理解に苦しむ。

FIAは同時に「スポーツとしての評判を落とす行為は処罰されることを忘れてはならない」と付け加えている。しかし、具体的な事例を明らかにしていない以上、どれだけの拘束力を持つか、はなはだ疑問だ。

禁止後にチームオーダーは根絶されたのか。そんなことはない。フェルナンド・アロンソ(スペイン、当時ルノー)を勝たせるため、チームが同僚に故意に事故を起こすよう指示したことを認めた08年シンガポールGP。昨季ドイツGPでは、首位を快走していたフェラーリのフェリペ・マッサ(ブラジル)がチーム無線を受けた後にスピードを落とし、同僚のアロンソを先行させた。

禁止されてもなお、チームオーダーをなくせない。悲しいが、これがF1の実態だ。事実、今回の見直しを疑問視する声も出ているという。

チームオーダーを容認しているスポーツもある。ツール・ド・フランスなど自転車のロードレースでは、エースを勝利に導くために、同僚選手は犠牲になる。

F1も同じ「チームスポーツ」だから許される…。FIAはそう主張したいのかもしれない。だが、F1の正式名称は「F1世界選手権」。あくまでも、ドライバーの争いだということを忘れてはならない。だからこそ、前年王者がつける栄光のカーナンバー「1」はチームではなくドライバーに与えられるのだ。

今回の決定は、F1の将来に暗く大きな影を落とす。そんな気がしてならない。(榎並秀嗣)