2011年のモトGPは、現行ルールの排気量800CCで争われる最終年となる。長年、2ストローク500CCで戦ってきたロードレース世界選手権の最高峰に4ストローク990CCのマシンが導入され、モトGPクラス、と名称を改めたのが2002年。この年から06年までは990CCで争い、07年には800CCへ排気量を縮小した。990CCと800CCで、それぞれ5年ずつ争ったことになる。

990CC時代にはあり余る膨大なパワーをいかに制御するか、に主眼を置いてきた設計開発思想は、排気量の縮小に伴い、制約条件下で可能な限り大きなパワーを引き出して効率的かつ滑らかに走らせる、という方向へ変化した。乗り方でいえば、コーナー進入でしっかりと減速して立ち上がりで素早く加速する、というメリハリのきいた走りから、コーナー内でも速い旋回速度を維持して高い平均速度を稼ぐ、より中小排気量マシンに近いライディングスタイルへの変化だ。どのようなマシン特性でも即座に吸収して柔軟に適応するバレンティーノ・ロッシに対して、250CCクラスからステップアップしてきた若手選手たちが即座に互角の勝負を演じ、ロッシ、ロレンソ、ペドロサ、ストーナーの<四強>時代が到来したのは、このようなマシン開発面での事情も大きく作用している。

990CCから800CCへの変化で見逃すことのできないもうひとつ大きな事項は、ワークスチームしか勝てなくなった、ということだ。990CC時代の5年間82戦中サテライトチームは22勝しているが、800CC化された07年以降2010年までの4年間71戦を見てみると、サテライトは一度も勝利していない。

<四強>選手のぬきんでた技倆やワークス-サテライト間の環境差が、大きな要因になっていることはいうまでもない。だが、990CC時代に勝利を収めたサテライトチームがすべてホンダ陣営であったことを考えれば、これらサテライトチームの弱体化は800CC化以降に「勝てなくなった」ホンダの弱体化を象徴する出来事といっていいのかもしれない。

その意味では、990CC時代のサテライト全22勝のうち14勝を挙げたグレッシーニ・レーシング(現サンカルロ・ホンダ・グレッシーニ)こそ、注目に値する。2011年の所属選手は、マルコ・シモンチェッリと青山博一。ともに、250CCクラスで総合優勝を獲得している実力者だ。ファクトリー契約でワークスマシンを支給されるシモンチェッリに対して、青山は完全サテライト体制からのスタートとなる。同一チーム内でも環境はそれぞれ異なるものの、だからこそ彼ら二名の戦いぶりは、ホンダがかつての強さを取りもどしたかどうかを計る絶好の指標になるだろう。(モータージャーナリスト・西村章)