イ・ボミ(韓国)の母、ファジャさんが、調子の上がらない娘の異変に気付いたのは、2016年のシーズンが終わってからだった――。

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少し時期がさかのぼるが、今年の2月、私はボミとファジャさんに会うために韓国・水原(スウォン)へと向かった。ボミが米国合宿へ発つ前に、どうしても本人から新シーズンに向けての話が聞きたかったからだ。

韓国メディアからの取材やイベントなど、オフでも忙しいスケジュールをこなすボミに会うことはできなったが、それでもファジャさんには、ゆっくり話を聞くことができた。

ボミが日本ツアーに参戦してからこれまで、ほとんどの試合に帯同しているファジャさんは、2016年シーズンが終わったあとの娘の様子をこう語っていた。

「2年連続で賞金女王を取ったのはすごくうれしかったですが、一方でボミの心と体は本当に疲れきっていました。試合で勝たなければならないというプレッシャー、ファンの期待に応えなければならないという責任感。取材のオファーもたくさんありましたから、それらをすべてこなすことで精神的に苦しい状況にありました」

いつも試合中はギャラリーの前で笑顔を見せていたボミだが、精神的にはかなり辛い状態にあった。そうしたコンディションを2017年シーズンも引きずっていたとすれば、1勝しかできなかった今年の状況も理解できる。

ファジャさんが聞かせてくれた話の中で、こんなエピソードもある。

「2016年のLPGAアワードで日本語でスピーチをすることにも、ボミはすごく緊張していました。そのせいか、ご飯が喉を通らないっていうんです。ボミは毎回『やるならしっかり、最後までちゃんとやりたい』と言いますし、元々、責任感の強い子です。ボミが日本語でのインタビューに、そこまで強いプレッシャーを感じていていることに改めて気づきました」

ボミの日本語でのスピーチはかなり上達しており、最近では聞く側にそれほど違和感はない。それでも、ボミにとって人前で日本語を話すということは、想像以上に気を使う作業なのだという。

それに加え、「2016年の終盤あたりから『ショットの調子が戻らない』と繰り返し言っていたのもすごく気になっていました」と振り返る。

「ゴルフの調子が戻らないことはすごく心配でしたが、周囲が色んなことを言いすぎるのもよくありません。でも、試合は続いていましたから、支える立場としては、『それでもがんばるしかないでしょう』と勇気づけることしかできませんでした。ツアー中、ホテルでは基本的に同じ部屋で過ごすのですが、ボミを一人にさせるときもありました。私がいると余計に気を使わせると思うこともありましたから」

ボミにとっては、母のアドバイスが、時にきつく聞こえることもあった。辛いときこそ、労わりの言葉をかけてもらいたいのは人間の心理。ボミの立場としては励ましの声が欲しいのだが、母から出てくる言葉は「それでもがんばるしかない」という前向きなものがほとんど。ボミも「それはオモニ(お母さん)が言う言葉じゃない。余計につらくなる」と言い返したこともあったが、「すべては私のことを思って言ってくれている言葉」と受け入れてここまで突き進んできた。
 
ファジャさんは試合がある週の練習日はホテルで待ち、トーナメントが開催される日は試合会場に向かい、18ホールをついて回った。

「韓国では練習場から試合会場など、すべての場所についていくのが習慣的になっているのですが、日本で同じことをやるのはいけないと思っていました。私はなるべく、見えない場所でボミを支えていこうと務めました」

練習日にはホテルで食事の用意をしてボミを迎えた。試合のスタート前はすぐに会場に足を運ばず、まずは車の中でお祈りをしてから向かった。

「私にはいつかまたボミのゴルフが良くなるように、陰でサポートしていますし、これからもそれは変わりません」

ボミは今季1勝しかできなかった。それでもファジャさんは、今以上の成績は望んでいないという。

「すでに日本で2回も賞金女王になったことは、とてもうれしいですし、十分に満足しています。やることはすべて果たしたと言ってもいいくらいです。それくらいボミが本当に誇らしいです。ボミがいつまで現役を続けられるかわかりませんが、プロゴルファーでいる間は、日本のファンのみなさんに元気な姿を見せられれば、それで十分です」

ボミの調子がいくら悪かろうと、どんな時も本音で叱咤激励できるのは家族しかいない。ファジャさんは、これからも変わらぬスタンスでボミのツアー生活を支え続ける。

文/キム・ミョンウ

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