今季国内女子ツアーで活躍した注目選手のスイングから強さの要因を探る“Playback LPGATour2017”。第18回は過去3度の賞金女王に輝いたアン・ソンジュ(韓国)をフォーカス。ツアー参戦初年度から8シーズンで23勝を挙げた実力者のスイングを、上田桃子らを指導するプロコーチの辻村明志氏に解説してもらった。

【連続写真】インパクト時の下半身に注目!アン・ソンジュのスイング連続
開幕戦の「ダイキンオーキッドレディス」で優勝し、最終的に賞金ランキング10位に入ったソンジュさん。これで8年連続賞金ランキング10位以内という安定ぶりですが、その理由はスイングにもしっかりと見られます。まず、バックスイングでは上体を捻転しながら手首のコックを使いつつクラブを上げていますが、最後にもうひと段階捻転の深みを加えています。それが両手の位置が高いトップをつくっている要因です。ソンジュさんの柔軟性があるからこそ最後にひと押しできるのでしょう。上体の前傾角度を変えずに、なるべく遠くにクラブを上げ、両手の位置を高くする理想的なトップです。

バックスイングでパワーを最大限まで貯めたソンジュさんですが、それをダウンスイングの切り返しと同時に解放しています。通常は、バックスイングでパワーを十分貯めることができないため、その反動で腕に力を入れてクラブを下ろそうとしますが、その真逆の動きです。クラブの重さを感じながら、そのまま真下に下ろすだけで、腕には力を入れずにクラブを下ろしています。トップでは一見、苦しそうにしていますが、ダウンスイングではリラックスしているように見えるのもそのためです。

腕に力が入っていないからこそ、ダウンスイングの切り返しでは、シャフトが耳の近くを通って下りてきます。まったく手首をリリースする動きはありません。よく剣道の“お面”の動きでクラブを縦に下ろしましょうといわれますが、まさにその動きを行っています。それにプラスして、ベタ足をキープして体を横に回転しているので、ボールのところにクラブヘッドが戻ってきます。縦と横の運動をバランスよく行うからこそできるスイングでしょう。

ソンジュさんがすごいのは、スイング中に下半身の形がほとんど変わっていないことです。アドレスとダウンスイングの切り返しで、ここまで下半身の形が変わらない人はほかに知りません。しかも、フィニッシュの直前まで右足が少しもめくれないのは、やはり相当な柔軟性があるのでしょう。同時に、フォローでは右手の甲が上を向くほどローテーションを行っています。それだけクラブを振り切っている証拠です。

本来ならここまでボールから遠くに立ってハンドダウンに構えると、横振りになるものですが、ソンジュさんは縦にクラブを振っています。それだけ体の軸が安定しているといえます。本人的には、ダウンスイングではよけいな動きを行わず、捻転を使ってアドレスの形に戻すだけで、ヘッドが自然と走ることを理解しているのでしょう。“アドレスはインパクトの再現”といわれますが、まさにそれを体現している数少ない選手です。

解説・辻村明志(つじむら・はるゆき)/1975年9月27日生まれ、福岡県出身。ツアープレーヤーとしてチャレンジツアー最高位2位などの成績を残し、2001年のアジアツアーQTでは3位に入り、翌年のアジアツアーにフル参戦した。転身後はツアー帯同コーチとして上田桃子、藤崎莉歩、小祝さくらなどを指導。上田の出場試合に帯同、様々な女子プロのスイングの特徴を分析し、コーチングに活かしている。プロゴルファーの辻村明須香は実妹。ツアー会場の愛称は“おにぃ”。