<ヒーロー・ワールド・チャレンジ 最終日◇3日◇アルバニー(7,302ヤード・パー72)>

「正直、想像以上だった」とは、タイガー・ウッズ(米国)の相棒キャディ、ジョー・ラカバの言。「ヒーロー・ワールド・チャレンジ」で試合に復帰し、大復活ぶりをアピールした“ボス”の姿に、ラカバは驚きと喜びの混じり合う笑顔を見せた。

【スイング連続】1年前…復帰したタイガーは下半身の使い方が変わった
今年4月に行われた腰の手術から7カ月ぶり、試合復帰は10カ月ぶり、4日間を戦うことができたのは昨年のこの大会以来、実に364日ぶりのことだった。9月下旬から行なわれた「プレジデンツカップ」の会見では「今後のことは、まったくわからない」と悲痛な表情で発言し、試合復帰はおろか引退の可能性さえ取り沙汰された。

戦線離脱となっていた間、ウッズはラカバに「前途洋々の若い選手へ乗り換えろ。何なら僕が口をきいてやる」と自ら勧めたそうだ。だが、ラカバは頑としてそれを拒み、ウッズの復帰、復活を信じていた。

だからこそ、徐々に健康な肉体を取り戻し、力強く球を打てるようになったウッズの姿を見たラカバの感慨はひとしおだったのだろう。

初日から5バーディーを奪い、3アンダーと好発進を切ったウッズは、2日目には一時は単独首位にも立ち、優勝の可能性さえ感じさせるプレーを披露した。3日目の“75”で優勝の望みは遠のいた。だが、最終日は再び“68”で回り、9位タイでフィニッシュ。

「ほぼ練習通りのプレーができた。アドレナリンが湧き出るのを感じた。とても満足だ」

ウッズのプレーを間近に見た選手たちは一様に「飛んでいる」と飛距離に驚きを見せていた。「315ヤード級だ」とラカバも目を丸くした。以前より飛んでいるのは、それだけスイングスピードが上がっているからで、つまりは腰の状態が十分に改善された証。

だが、ウッズが満面の笑顔で喜んでいるのは飛距離やスコア、順位だけではない。腰の痛みを感じず、腰の状態に不安を感じず、ゴルフができるようになったこと。ヘルシーな肉体こそが、何よりであることを実感できたことだ。

「腰痛に苦しんでいたころ、世界はとても小さく狭く見えた」

今、ようやくウッズの視界が広がった。健全な肉体に健全な精神が宿ったことが、彼のゴルフを大きく復活させつつあるのだと思う。

最終日、大会新記録となる“61”をマークし、首位と7打差から大逆転優勝を遂げたリッキー・ファウラー(米国)も「ヘルシー」という言葉を何度も口にした。

メジャー優勝に何度も迫りながら、いまなおメジャー未勝利のファウラー。昨季は1勝に留まり、米ツアー通算4勝。彼の国民的人気や爆発力と照らし合わせると、それらの数字は「少ない」と米ゴルフ界の誰もが感じている。

しかし、ファウラーは常にポジティブな点に目を向け、心をヘルシーに保つ。

「(9月に)プレジデンツカップで(米国選抜チームとして)勝って、(今季は)OHLクラシック・アット・マヤコバで2位になって、先週はカリフォルニアに帰ってサンクスギビングを家族で祝って、いいことづくめだった。この優勝は今年のいい締め括りになり、来年へ向けてのいい兆しになった。そして、タイガーには、ずっとヘルシーでいてほしい」

そういえば、今週、バハマに一番乗りして一緒に練習ラウンドをしたのは、ウッズとファウラーだった。その2人が、どちらも好プレーを披露し、満足の笑顔で去っていったことは単なる偶然ではないだろう。

リハビリ生活明けの復帰戦で315ヤード級ドライブを放ったウッズの復活ぶりと最終日に11アンダーで回る猛追を見せたファウラーの勝ちっぷりは、どちらも驚異的だったが、どちらも奇跡のようで奇跡ではない。起こるべくして起こったこと。

導き出したのは、健全な肉体と精神だった。 

文 舩越園子(在米ゴルフジャーナリスト)

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